「尺もコンパクトなら、満足度も緊迫感もコンパクトに凝縮」ザ・ウォール Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
尺もコンパクトなら、満足度も緊迫感もコンパクトに凝縮
90分間、息つくヒマも与えてくれない、緊迫の戦場シチュエーション・スリラー。「ダンケルク」の影響で上映館が少ないが、これは掘り出し物かも。戦争のスケール感なら「ダンケルク」だが、孤立無援の絶体絶命なら、こちら。
監督はダグ・リーマン。「ジェイソン・ボーン」シリーズの仕掛人で、トム・クルーズの「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の監督を務めている。
舞台はイラク戦争の荒廃した村。2人のアメリカ兵が、戦闘のがれきに残された崩れかかった壁の前で、潜む敵に警戒していた。
5時間経っても動きがないため、1人、マシューズが壁に近づくと、突然見えない敵からの狙撃を受けて倒れ込む。援護に向かったアイザックも銃弾に脚を撃ち抜かれる。なんとか壁(The Wall)の陰に隠れ、味方の応援を無線で呼び掛けると、声の主はなんと無線を傍受して話しかけてくる敵だった。
イラク戦争当時に実在し、ひとりでアメリカ兵37人を殺害した、凄腕のスナイバー"ジューバ"をモデルにしている。見えない遠距離からこちらに狙いを定め、会話でもてあそぶように心理戦を仕掛けてくる・・・。
"見えない敵に狙われている"、"怪我で動けない"、"水・食料はわずか"、"無線は使えない"、"敵の目的がわからない"。
主人公アイザックを演じるのは、「GODZILLA ゴジラ」のアーロン・テイラー=ジョンソン。限られた条件のなかで生き残りを掛けて、アイザックはひとり戦う。
敵は見えない銃口と無線の声で、演技としては、アーロンのほぼひとり芝居である。とにかく極上の緊張感を楽しめる。オチは相当シュールで、"そう来るか・・・"となんとも言いがたい(何となくリピートしそう)。
見終わった直後の満足度はそれなりに高いのでオススメだが、ホームシアターでもいいと言われれば、それまで…。 Blu-rayを待ってもいいかもしれない。
(2017/9/3/新宿バルト9/シネスコ)