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「胸糞悪い連中にイライラ」マザー! Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
胸糞悪い連中にイライラ
全米での興行が振るわず、日本公開も見送られた不運な作品だが、これは日本人に受け入れられる作品ではないだろう。配給元も良い判断をしたのでは無いか。その理由として、本作の根源はズバリ聖書。もっぱら私も読んだことは無いが、映画に触れた際に意味が分からなくて調べたら旧約聖書の第何章の・・・という事が過去何度かあったため、そこで調べ得た脆弱な知識を加味すると、全くの無知では無い・・・と自負している。だが、日本人一般はこんな感じではないだろうか。これを機に聖書に興味を持つ反面、逆に絶対読みたくない気もする。
天地創造のあれこれは、やや理解し難い物があると思うが、本作は一般家庭の日常生活における場面に置き換えて天地創造を描いた作品と思われる。本作では妻(マザー)を目線にして具体的に描いており、その構成が分かった時(劇中で理解不能でも後に調べて理解した場合でも)には、見事な構成だと拍手を送りたい程の感動を覚える。だが、そこに至るまでが我々日本人には困難を極めるという訳だ。
まず、本作で母(マザー)を演じたジェニファー・ローレンスは、恐らく地球を表している。そこで、招き入れられた客らは我々人間である。本当に無神経でバカ揃いの客人らであり、私も潔癖が故に自宅に人を入れた事も無いし、入れたら入れたで何を触ったかが気になる位だが、とにかくこのシーンを自分に置き換えると心底胸糞悪い。勝手に物(環境)を壊して、殺し合って、大地に血を付けて、我が物顔で我こそが地球の主だという客人(人類)がいる。地球もこういう気持ちなのかと考えると申し訳なく思ってしまう。そして、登場人物らの台詞から、この惨事が初めてでない事が悟られる。結局また同じ過ちを繰り返すのだろう。
この解釈に加えて、地球上の歴史からも分かる、女性への待遇も皮肉たっぷりに描いているのもポイントである。聖書に対する批判とまでは思わないが、明らかに現代社会の闇と聖書をリンクさせて描いているのである。国が国なら暴動が発生してもおかしくない内容だ。「全世界震撼」や「超問題作」等の煽り文句も間違ってはいない。何だか映画の中で出来ることの最大限を見た気がする作品である。