「工夫を凝らされた映像表現と本格的な音楽」劇場版 響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ AMさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0工夫を凝らされた映像表現と本格的な音楽

2019年5月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

ストーリーは万人向けです。
繊細な人間描写や、演奏シーンの映像は必見、音楽は本格的なものです。

アニメと言うと、漫画的表現で、アニメファン向けの通り一遍の演技しか見られないとおもわれがちですが、
このシリーズは違います。
人生の大事な時期を過ごす若者たちの、感情の機微や自然を描く上で、
観客の記憶が揺り動かされるような表現手法がふんだんに用いられています。
絵でそれをやるのですから、大変な観察力と技術力が必要ですが、世界でも屈指の表現力を持つスタジオの実力がいかんなく発揮されています。
展開が早いため、映像の切り替わりが次々に起こり、結果的に面白く美しい絵がたくさん動いていく贅沢な作りで楽しいです。

声の方も、主人公役の方の演劇経験もあってか、アニメ的な声色を使った演技は外向きの声に留められ、普段の素の声と本当の感情をさらけ出す時の演じ分けなどが素晴らしく、大事な所では本当に直接感情に刺さってきます。
音楽は吹奏楽の関係者をして、これが吹奏楽曲だよ、と言わしめる、各パートの見せ場がふんだんに盛り込まれた本格的なものです。
楽器の操作なども、研究を重ねた上で描画されています。
打楽器の演奏など、あの「セッション」でも無かった絵があったと思います。

ストーリーは、シリーズ毎作ごとに、原作者の過去の経験に基づいた等身大の人たちの群像劇を、巧緻にまとめて一つの大きなメッセージを作っています。
目指すものへの憧れと不安、努力と消耗、葛藤、競争、いくつになっても、誰にでも起こり得る出来事を、逃げずに丁寧に描くことで、見る側に自分の解答を促す作りは変わっていません。
どこにでも居る人達が、真摯に丁寧に前向きに関わり合えば、こんな人生の糧を得る事が出来る。
そんな素晴らしい気持ちで館を後にできるシリーズです。
これを期に、「ようこそ北宇治吹奏楽部へ」、「届けたいメロディ」、「リズと青い鳥」の鑑賞もおすすめです。

fulafff
かせさんさんのコメント
2023年7月26日

京アニは自社レーベルの映像化の場合、邦画的な実写表現多めですね。
石原、武本、山田と三人のトップ監督が携わったリズとこの作品、じっくりと噛み締めました。

かせさん