真っ赤な星のレビュー・感想・評価
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ラストの無言
パラグライダーの降下地点の奥行きある緑、青い空、天文台のドームを開けた星空のシーン、薄暗さや暗闇の使い方、雨降る窓に干された下着…惹かれる撮り方がたくさんありました。
物語としては、一つのテーマに着地させる為に作ったというより、恐らく自身の内面に渦巻くものを作品に落とし込んで昇華させたのだと思います。商業映画は巷に溢れているので、こういった動機の作品を見ると感情を刺激されますね。
陽の心を想像すると、「マイノリティ」という括りでもなく「愛」と呼ぶには少し違和感のある、不思議な感覚になりました。客観性の無い愚直で不器用な愛を、自分が大人になるにつれて抑え込むようになってしまったのかな…。独占欲も時には美しく見えるものですね。
2人は一緒にいてもきっと苦しいんだろうね。刹那を生きる事でしか幸せだけに浸る事はできない、そう思わされた映画でした。
ラストシーン、弥生を無言にしたところが一番好きかもしれない。それは優しさなのかも。恋の儚さも終わりのあっけなさも知っている大人なんだろうな。
桜井ユキの可愛さに誤魔化される。
易い哲学、無理に捏ね繰りだした屁理屈、間違った視点の社会問題、偏ったイデオロギー、純粋な私小説。映画に限らず、そういうやつが好きじゃないです。最近やたら目に付いてウンザリしてます。井樫彩さんと言う監督さんの事は何も知らないけど、少なくとも「嫌いなものリスト」の要素は見当たらなかった。かなぁと思いました。
14歳の少女の孤独と依存心と独占欲が、27歳の「消えてしまいたい」と思っているオンナに伝染し、共依存性を生み出す物語。
とにかく、出て来る男がクズ、クズ、クズ。避妊せず買春。しかもクルマの中。14歳の女の子に手ぇ付けるは、妻子ある身で不倫して、不倫相手に「お前が一番」とか言うわ。世の女性に言っておきますが、こんなクズばっかりじゃありませんから、あなた方の住む世界。早まってはいけませんし、諦めてもいけません。しかし、何でこんなクズしか出て来ないかなぁ。監督、何か悪いモノでも食いましたか?過去に。
冒頭シーンの桜井ユキが愛おしい。これね、男の中の色んなものを爆発させます。単純な性衝動以外の、いろんなもの。説明すると長くなるので省略するけど。この時点で「弥生ちゃんが好き」になってしまう少女の気持ち、わかる。
弥生ちゃんは厭世ビッチの寂しんぼう。もうね、グレグレにぐれちゃってます。ついでにグショグショビッチ。自分の身体を傷つけると、心の傷は浅くなって行く。多分、そんな感じなんだと思う。似たような経験は実は誰にもあると思います。どこから、何時から、陽への愛が膨らみ始めたのかは判らないけど、からかう様に陽にキスをしてグショグショの自分に触れさせた夜、かなぁ。あのシーンのエロさと来たら。暗い中で声だけだなんて。
結構、痛々しく生々しい描写が続きます。「岬の」の嘔吐してしまいそうな生々しさは俺には辛かった。このくらいが丁度良いと思う。時間の流れは緩やかで、「早い展開中毒」のTV慣れした日本では共感してくれない人の方が多いでしょうが、俺は好きです。最近、このユルユルなタイム感に、はまってるかも知れない。
画の作りも、後半戦は良いなぁ、と思うシーンが幾つかありました。陽が階段の外廊下で弥生ちゃんを待つシーンをアパート真正面からとらえた、なんでもない画の構図。閉鎖状態の天文台に忍び込みドームを開く場面。銭湯で陽の背中にキスマークを付けるシーン。水中の陽と弥生。などなど。結構、好きかも知れない。
偏った人物設定に、作者の内省的に過ぎる感性が反映されてる気がして、ちょっとだけ鼻につくんですが、桜井ユキに誤魔化されたと思う。普通の男と女の成婚ストーリーなんかを撮ってくれたら、ある意味面白いと思う。監督さん、拒否反応出るでしょう。それを乗り越えて撮るハッピーエンドって、甘苦で具合良さそうな気がするから。
切ないよ、弥生ちゃん
若干21歳(当時)の女流監督が撮影した作品。彼女の過去作を鑑賞はしていないし、どれだけの才能があるのかは正直不明である。なので、こんな長編を制作できる類い希なる強運の持ち主という視点で、宝くじに当たった以上の高確率に賛辞と嫉妬を贈りたい。商業作品一本も撮れなくて、夢半ばで去っていく自称監督は掃いて捨てる程いるのだろうから・・・
脚本も監督ということで、ストーリー設定が経験なのか、伝聞なのかは不明だ。それにまして、自分は男だから、性差故に物語の本質を正直理解することは困難だ。なにせ、殆どの登場人物の男は所謂“クズ男”ばかりである。その中で唯一同級生の男の子のみが、まだ理性を保ちながらの関係性を維持していることが救いという図式である。なので、本作のコンセプト自体は、自己優先の大人達と、純粋な子供との分水嶺を激しく表現した青春映画という位置づけであろう。少なくても、今流行りの美男美女がでているラノベ&少女漫画類の作品に比べれば何倍も意義がある作品であることには間違いはないのだが。
そもそもがテーマが『偶然』という括りで集約してしまう位、ストーリー展開に於いて必然性は隅に追いやられている。何で天文台の鍵があくの? なんでコンビニ帰りにその道通るの?いや、そもそもなんで入院していたの?等々、とにかくリアリティが皆無だ。そうなると没入感が乏しくなる。リアリティといえば、お風呂屋さんに於ける主人公ティーンエイジャーの女の子のまだ未発達な幼児体型の姿態が生々しかった位である。赤い星は、パラグライダーの裏地の赤という由来らしいのだが、そもそも星とパラグライダーには共通がない。天文台で観た星は、果たしてアンタレスなのか、その辺りは想像するしかない。
総じて思うことは、大人と子供の戦いの中から、徐々に大人へと変わっていく出発点を表現していること。但し、ここまでセンセーショナルな出来事の数々は、サービスなのだろうけど・・・
濡れ場の薄暗さに、監督の照れを感じるし、正直背伸びしすぎた感は否めない。監督のならなる成長を願って止まない今日この頃である。
追記:日を追う毎に、今作品のコンセプトが段々想像出来てきた。それは、“関係性萌え”という一言なのではないだろうか?女性同士という特殊な間柄に落とし込んでいるが、逆にこれが男性同士であれば、明らかに『ツンデレ』と『一途』という一方通行の恋愛に帰着する構図である。なので、別にこの二人の背景や状況設定の詳細や辻褄は必要ないということなのだ。便宜上、又は映画作品の体で設定されてはいるが、いわゆる“ヤヲイ”系に通じるような同人的なコンセプトなのだと思うようにすると、自然と全てが合致してゆく。となると、今作品、相当マニア受けする出来なのではと強く感じた。
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