「良質な短編小説を読んだ後のような余韻」ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択 sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
良質な短編小説を読んだ後のような余韻
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ケリー・ライカートは、現代のアメリカの映画作家の中でも格の違いを見せつけている。
今回はホームであるオレゴンをちょっと出て、モンタナが舞台。牧場と夜明けのリヴィングストンの街並が美しい。
弁護士事務所の駐車場での素っ気ない別れのシーンが、抜きん出て素晴らしい。
「来ちゃった」
「ビックリした」
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「動物の世話があるから行くね」
リリー・グラッドストーンのなんとも言えない表情。そして淡い未練を引きずって、もう一度クリスティン・スチュワートの方を見るやるせなさ。
それでも人生は続く。
敢えてケータイを出さない演出がまたよい。
女性たちは、現実のしんどさとディスコミュニケーションに日々さいなまれる。でもライカートは微かな救済の視線も忘れない。
ローラ・ダーン扮する弁護士は「依頼人が自分の言うことは聞いてくれない」と愚痴るが、実際には一番頼りにされている。依頼人は服役で穏やかになったように見えるし、ラストの手紙についての話は心に沁みた。
石の持ち主の老人は少し認知症で、ミシェル・ウィリアムズ扮する母親の方には一瞥もくれず、言うことは無視しているように映る。でも結局石は譲ってくれたし、「奥さんは働き者だ」と実は認めている。
微かではあるが、暖かい視線を施すところに監督の確かな資質を改めて感じる。
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