「邦画、時代劇の良さが凝縮した映像美に感動!」散り椿 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
邦画、時代劇の良さが凝縮した映像美に感動!
本日は台風24号が日本中を直撃と言う事も有り、街中が早仕舞をしていた事も有り、私が本作を鑑賞した上映回では映画館の中は粗貸切り状態だった。(私を含めて5人程だったと思う)
しかし、入り具合とは裏腹に、心底久し振りに秀作に出会えたようで、台風の前に映画に来て本当に良かったと嬉しくなった
先ず小泉氏の脚本が素晴らしく良い!さすが本編を知り尽くしている作家は違うと思った。
この物語もジャンル的に言えば、ラブストーリーではあるけれども、最近の邦画で語られている恋愛物とは次元が大きく異なる。
只、欲を言えばナレーションがもう少し時代劇らしい風情の香りの有る物で欲しかった点とナレーションをなるべく控え目にして、8年前の出来事は回想シーンをもう少し多用する事で、映像をしっかりと観せて欲しかった事を除けば、久し振りの最高点と言いたいところだ。
そして更に始まりから終わりまでのカットカットその全てのカメラワークの美しさは、まるで絵画の連続絵巻を観ているようで、その美しさに思わずため息が漏れる程の感動を覚えた。
本作は本編時代劇の情景美の美しさのお手本を魅せ付けられているような作風で、流石は木村監督自身が撮影もされていると言う、この圧倒的な迫力の有る映像と深みの有る映像美が、他の作品とは格段の違いを魅せていた!
同じく岡田氏が出演している時代劇「関ヶ原」とは比べ物にならない程本作は美しかった。
岡田准一もやはり現代劇よりもこうした時代劇の方が格別に彼の芝居の味の良さが強調されている様に思う。
そして黒木華が素晴らしい。時に控え目で有り、また有る時は存在感を魅せられる女優らしさ、いつの間にか、本当に華の有る映画女優らしく育っていた事に驚いた。
奥田瑛二始め、石橋蓮司、富司純子と脇を固める役者も役柄にとても合っていたと思う。
只惜しいのは西島演じる采女と岡田演じる新兵衛が平山道場の四天王と言われていたと言うには少しばかり武術の出来映えに開きが有る様に感じてしまったのだが、それは意図的だったのだろうか?
藩の不正賄賂と汚職事件の真相と言う時代劇では定番のストーリー展開で殊更真新しい事はない物語だけれども、それを巧く新兵衛と篠との純情ラブストーリーにまとめ上げた点がこの作品の良さであり、その2人の気持ちを充分に知って尚、新兵衛に想いを寄せる、里見の美しい心根が輝きを放っていたと思う。
地味で暗くやるせない話では有るかも知れないが、時にはこう言う作品が公開されるのも良いのではないだろうか?
変化に乏しい定番時代劇かも知れないけれど、2018年の今の邦画界には公開出来て良かったのではないだろうか?
もう1度映画館に行って観直しても良いと思える作品だった。
原田監督作品では「突入せよ!浅間山荘事件」が大好きですね。評判悪いけど(笑)
役者の良し悪しは演出次第。全く同意見です。
例えばクラス1の地味男が成長して小栗旬に成ってしまうゴミ映画も有れば(笑)、主人公が聾唖の設定だったがヒロイン役が喋らせたらイマイチだったんで両方共聾唖の設定に変えたと云う「あの夏、いちばん静かな海」なんていう傑作もあります。
映画はスターで観るものと云う意見は否定しませんが、巧い監督は役者に頼りませんよ。
MAKOさん、はじめまして!コメントありがとうございます!「関ヶ原」はホントちょっと残念でしたね。原田監督作品では「わが母の記」が好きでしたね。同じ俳優さんでもやはり監督の演出で善し悪しに差が出ると私は思っていますが?どうでしょうか?