「心躍らないミュージカル。」ジュリーと恋と靴工場 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
心躍らないミュージカル。
可愛らしいポスターにキュートなタイトル。楽しそうなミュージカルと思ってついついチケットを買ってしまったものの、実際のところ、可愛くもお洒落でも明るくも楽しくもない、地味ィでどんよりしたミュージカルだった。いやいや、別にミュージカルが地味でもいいし、明るくなくてもまったく構わないのだけれど、なにしろストーリーがまとまっていないので、まったく琴線に触れない上に、肝心のミュージカルシーンに躍動感がなく、こちらの心もまったく躍らない。そのため、ミュージカルシーンになると話がピタッと止まって停滞してしまったように見えてしまう。これはミュージカルの悪い例。たしかに60年代のジャック・ドゥミの映画を一瞬彷彿させたような要素はあるものの、ミュージカルシーンがそれを安っぽく劣化させたようなクオリティ。良いミュージカルは、曲が流れた瞬間にロマンティックが弾けるような感覚があるんだけどな。
それに私、この映画を見れば見るほど、時代錯誤のフェミニズム的に思えてならなかった。男は全員バカで、女は闘う猛者という安易な方式を用い、逆境に立ち向かう強い女を描くかに見えて、彼女たちには強い志も信念も才能も努力さえもあるわけではなく、男性の社長が築き上げた会社の体制に不満を垂れているだけにしか見えず、概念をはき違えたフェミニズムみたいなものを感じてしまってますます楽しくない。男に刃向かうことをフェミニズムとする時代はもう過ぎ去ったと思っていたんだけどなぁ・・・。この映画を観たら、時代が止まったままみたい。
女性をターゲットにしている作品っぽくなっているけれど、女性にこそあえて薦めたくないという気持ちにさせられるような、そんな残念な映画だった。