「愛もリスペクトも無い愚作。」Death Note デスノート ガッキーさんの映画レビュー(感想・評価)
愛もリスペクトも無い愚作。
小生が原作ファンという事もあるが、思わずブチ切れそうになるほどの駄作だった。
監督は、「サプライズ」、「ブレア・ウィッチ」、そしてあの超大作の「ゴジラvsコング」のアダム・ウィンガード監督。
決して腕が無いわけではないと思うのだが、少なくとも本作では一欠片も擁護できかねる。
◯尺が短すぎる。
そもそも上映時間が、エンドロールを除くと、なんと90分。
この時点で、この映画の敗北は確定しているようなものだ。
邦画版ですら前後編の4時間強で、それでも進行具合は原作の半分程度で、どうにか終着させたというのに。
おかげで説明セリフが多用されまくっている始末。
しかも、ただでさえ超尺不足にも関わらず、本編はスローモーションを多用しているという、もはや製作者は匙を投げているとしか思えない。
◯キャストに関して。
ライト役は、ナット・ウルフ。
あれ?どっかで見たことあるような…と思った人もいるかもしれないが、
あの「ヘレディタリー/継承」のアレックス・ウルフの兄である。
L役は、ラキース・スタンフィールド。
「ゲットアウト」で、冒頭から大変な目に遭ってしまうあの人である。
顔の下半分を隠した状態でのシーンが多いというハンデにも関わらず、見事な目力で絵を持たせていたと思う。この映画で褒められる貴重な長所だと思う。
主演した「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」の熱演も素晴らしかった。
ちなみに日本語吹き替え声優は、島崎信長、三木眞一郎、坂本真綾、中村獅童という豪華メンバー。
中村獅童は、唯一、リュークの吹き替えを続投している。ちなみにリューク役はウィレム・デフォー。
◯ライトへの不満
原作のキャラクターとは全く違う、天才でも何でもない気弱な主人公が、
いじめっ子の暴力に屈し、教師からも見放され、その状態からデスノートという甘い蜜に惹かれるという発端になっているが、ストーリーのフックとしては実に弱い。
邦画版の、法律に絶望して…や、ドラマ版の、父親を助けるために…の展開に比べると、
その出来は雲泥の差だ。
(と言うか本作のそれは、ドラマ版の展開と似ててそれを更に安っぽくしてしまったような感じである。)
意中の女の子に振り向いてもらうために…というのも、良くいえば俗っぽいと言えるが、見事に矮小的なスケールになってしまっているし、
だいたい、スクールカーストの底辺にいた者が、対岸の華である学校のマドンナと結ばれるという展開自体が極めて安っぽい。
天才にも悪人にもなり切れず、探偵にあっさり追い詰められ、恋人にも翻弄されるという、ひいては、主人公としての魅力が皆無に等しいのである。
◯ミアへの不満
個人的に諸悪の根源がこれ。はっきり言って邪魔なだけでしかなかった。
ライトとは恋人 兼 共犯関係となり、これでボニー&クライドみたいな関係になるならまだ許せたが、
バカップルのメロドラマを延々と見させられるのには反吐が出た。
ミアが次第に野望に目覚めて、逆にライトとは立場が逆転していくという原作と真逆の展開は、これはこれで新鮮味があると好評する人もいるようだが、
はっきり言ってそんなファムファタール的なのは至極どうでもいいし、
だったらいっそ、このキャラクター自体、思い切って割愛して、
もっとライトとLのバチバチの頭脳戦を見せてほしかったし、この短い尺なら絶対にそうするべきだったと思う。
◯Lへの不満
原作ファンが大激怒しているのは、恐らくここだと思う。
Lが黒人な件は、とりあえず一億歩譲るとして、この性格の大改変にはやはり違和感しかない。
いわゆる、大切な人を奪われてしまった悲しみゆえの…という、よく言えばLの人間らしさを感じられなくは無いのだが、
ただ、根本的にその人との絆が大して描かれておらず、せいぜい「睡眠は大事ですよ」的なことしか言われていないので、まるでドラマを感じないのが問題だ。
翻って、本編の短さがやはり足かせになってしまっている。
挙げ句の果てには何をどう間違えたのか、「ブレードランナー」の真似事をし始める始末で、
とどめにラストでは噴飯ものの顛末を迎える。
◯リュークへの不満
いちいち介入しすぎている。もっと傍観者でいろよと。
死神という存在ながらも、チャーミングっぽさがあり、そこが魅力のキャラクターだったのが、この改変は、ただの鬱陶しい奴に成り下がっているだけ。
◯その他
・ワタリの名前の例の展開はいくらなんでも酷すぎるし、そもそもそんな迂闊なわけが無い。
・終盤の追跡劇シーンが無駄に長すぎる。
・「ルールが多すぎる!」は、こっちのセリフだよと思った。
・「ファイナル・デスティネーション」を彷彿とさせるスプラッター描写は良かった。
◯エンドロール
極め付けは、ミッドクレジットで何が流れたのかと思いきや、なんとNG集。これには我が目を疑った。
どっかのピクサー映画やジャッキー・チェン映画じゃあるまいし、
本作みたいな鬼気迫る頭脳サスペンスが売りの作品に対しては、どう考えてもミスマッチだろう。
製作者の真摯さがかけらも無く、底が知れている。マジでふざけるなよと思った。
◯まとめ
甚だ余談だが、タイトルは変えて欲しかったなぁ…この際「ザ・デスノート」とかでもいいから。
原作もアニメも邦画版もドラマ版も同じ題だから、ネット検索がめちゃくちゃ面倒臭いんだよ。