「じんわりと深みがある。」月と雷 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
じんわりと深みがある。
奇妙な人間関係。
みんな何かが欠けている。普通に見えていそうでも、欠けている。
だらだらと、だらけて生きている。まるで自分の意志がないように。
ただ思うように、いや、惰性に流されるように生きている。
つまり、見ようによっては、だらしない連中が覇気もなく気怠く出てくるだけの映画だった。
だけどなんでだろう、エンドロールが流れている間、なんだかわずかに温かみを覚える涙が流れてきた。直子と泰子の別れのシーンを思い出し、手帳を火にくべるシーンを思い出し、泰子の笑顔のラストを思い出しながら。たぶん、自分も小さいながらも何かが欠けている人生を過ごしているからだろう。
そしてその感情は、「泥の河」の読後と同じ種類のものだと思い出した。
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