「豪華すぎて逆にチープ」カンフー・ヨガ 思いついたら変えますさんの映画レビュー(感想・評価)
豪華すぎて逆にチープ
この映画はほとんどヨガが出てこない。それどころかカンフーすら他の要素に押し負けてる。他の要素というのは、煌びやかなドバイの高級車や、TVセットばりに仕掛けの浅いダンジョンや、CGであることを隠そうともしない動物たちだ。
前半の氷原を探索するシーンでジャッキーが現代テクノロジーを賞賛するシーンがあるが、この映画自体が現代テクノロジーに翻弄されてる。まずカメラが解像度上げすぎ。奥も手前も同じぐらいクリアなので逆に平べったいし、CGの動物たちの人工的な質感を誤魔化せてない。動きはリアルだが、作り物感を隠す気がないのでどうしても液晶一枚隔てた客観的な目でしか見られず命懸けの窮地だと信じられない。そのくせ動物とのバトルが無駄に長い。
ツルツルの氷の洞窟やライオンと相乗りしながらのカーチェイス、インドの屋台や大道芸を絡めたおもしろカンフーのアイデアは相変わらず冴えまくってるが、本当にアイデアをカタログにして羅列しただけで終わってしまってる。面白いはずなのに面白さが死んでる奇妙さを味わった。
何よりカンフーの添え物感に拍車をかけるのがソーヌー・スード演じる敵ボスの掘り下げのなさだ。敵のバックボーンはヒロインが口で解説するだけ、本人が黄金に焦がれる切実さも、ジャッキーとの因縁もあまりナシ(そりゃ敵討ちネタとかは今まで散々やり尽くしただろうけど、それにしてももう一声欲しかった)。かといって技やバトルスタイルもいたってプレーンで無個性、気の利いた用心棒のようなキャラもいない。
映画全体に予算をふんだんに使った贅沢さを感じるが、それで撮りたかったのがこの歴史のお説教と観光案内みたいなビデオなのか。キラキラした黄金世界の豪華さに完全にカンフーが派手さで負けてる。スポ根ノリの時代ではないということだろうか、でもせめてスプレーでいいから汗のひとつも光るアクションスターたちを見たかった。導入は丁寧でワクワクする要素が散りばめられてただけに、話の尻すぼみ感もあって残念。