「青年実業家=クソ野郎は世界の常識」インビジブル・ゲスト 悪魔の証明 ハルクマールさんの映画レビュー(感想・評価)
青年実業家=クソ野郎は世界の常識
スペイン産青年実業家で名声を手にしたはずの主人公がバカ~ンなクライムサスペンス。
法廷で無罪を勝ち取るためにありもしない事実をでっち上げ、それを固めていく作業を悪魔の証明と言うのだそうな。いつも付加価値どころか映画の魅力を削りに行くモードの多い邦題サブタイトルの中ではよく出来たタイトル。
青年実業家のドリアは美人妻と可愛い盛りの娘がいるにも関わらず写真家のローラとW不倫の関係を続けていて、ある日ローラ二人で入った雪山のホテルで襲われるところから映画は始まる。
ドリアは洗面所で背後から襲われ気絶、目を覚ますとローラは鈍器で殴られて死亡した状態だった。部屋は窓はロックが掛かっておりドアもロック+キーチェーンの完全密室状態。当然の如く容疑者となるドリアに、顧問弁護士から紹介されたと女性弁護士が訪れる。
グッドマンと名乗る女性弁護士は、三時間後に法廷に招集され、そこに新しい証言者からの新証言があるため、再度証言を確認しようと持ち掛ける。
限られた時間の中、取り急ぎドリアは事件の概要を話すが、そんないい加減な証言ではなく、きちんとまず事実を話すよう迫る。
すると、ドリアの口から三か月前に起こったある事件が語られ始める。
最初にホテルで起こった事件は、実は時系列的には一連の事件の最後の顛末なんだけど、そこに至るまでのアレコレをドリアの語りとグッドマンの裏読みの応酬でどっちが正しいんやろ、って常に頭をひねりながら追いかけていく形になる。
もちろん、この完全密室状態がどうやって作られていったのか、そこも最大の謎ではあるんだけど、伏線として張られている誰が新たな証言者なんだろうとか、その前の事件からどうやってキーパーソン達はドリアとの関連性を知ったのかとか、いろんな事実が一旦は固められて、なるほどなーとなるもののまた覆されて別の事実を見せてくる。
それが虚実ともども全て再現フィルム的に見せられるので、しっかりミスリードされて、またグッドマンがでもそうじゃなくね?と突っ込まれてドリアが、いや実はね…とやるもんやから、時々混乱すると同時に、私のなるほどー納得ーを返してよ!となる。
そして話が進むほどにクソムーブを連発するドリアとちょっと呆れつつもクライアントだから一生懸命あーだこーだと証言を考えるグッドマン、そんでまた実は…と始まるもんだから、もうドリア君いっそごめんなさいした方がええんちゃう?と思いたくなる。
いよいよ三時間が経過する頃、そこまで引っ張りに引っ張ってきた場面がいきなりとんでもない方向に吹っ飛ばされていく。多少、いやかなり無理筋もありなのは認めるけど、それにしてもそうきたか~!と思わず唸る残り10分の種明かし。
最初は見つかりそう、とか主人公カップルにハラハラしていた自分を恥じるような、もうどーしょうもない話をしっかりスッキリ落としてくれた、面白い作品だった。