「米国北西部のオレゴン州、貨物列車は集うが、人はまばらな小さな町。 ...」ウェンディ&ルーシー りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
米国北西部のオレゴン州、貨物列車は集うが、人はまばらな小さな町。 ...
米国北西部のオレゴン州、貨物列車は集うが、人はまばらな小さな町。
小さな自動車(ホンダのアコード)で、愛犬ルーシーとこの町にたどり着いたのは、若い娘ウェンディ(ミシェル・ウィリアムズ)。
中西部のインディアナから職を求めてアラスカへ向かう途中。
アラスカに行けば求人は多い、そう信じての旅だ。
操車場近くで屯する若いトラヴェラー(移動労働者)たちのひとりは、缶詰工場を訪ねるといい、俺は器材をぶっ壊して逃げてきたけれど、と屈託なく笑う。
さて、翌日、ルーシーのドッグフードが尽きてしまったウェンディは、駐車場警備員から教えられたスーパーマーケットへ向かう。
なけなしの金を残しておきたかったルーシーはドッグフードを万引きし、店員に見つかり、結果、警察に連行されて、ドッグフードの何倍もの罰金を支払う羽目になってしまう。
さらに運の悪いことに、スーパー前の柵に留めていたルーシーの姿は消え、自動車も故障して動かなくなってしまう。
デッドエンド、行き止まり、万事休すの人生か・・・・
といった内容で、ケリー・ライカート監督の演出は、安易にウェンディに寄り添わない。
遠くから、静かに、途切れることなく見つめているだけ。
しかし、幾度となく登場する横移動撮影は、途切れることなく見つめているという感じを醸し出している。
(冒頭のウェンディとルーシーの横移動のロングショットだけで、この映画が好きな類の映画だと確信しました)
その後、保健所の女性係官や自動車修理工場主(ウィル・パットン)とのやりとりなどがあり、アコードを修理に出したために寝る場所を失ったウェンディは、線路が見える崖上の森の中で野宿しようとするが、そこで恐怖の体験をする。
突然男が現れ、「見るな」と云い、ウェンディを注視する。
襲われる・・・殺される・・・
このシーンはメチャクチャ怖い。
『イージー・ライダー』のラストのような怖さ。
米国の、余所者に対する嫌悪感・排他性の表れで、駐車場警備員のやさしさとは裏腹。
米国の二面性が恐ろしいほどに表されています。
最終的にはルーシーと再会するウェンディだが、車を失った(修理する金がない)彼女はある決断をして、アラスカへの旅を続けることにする・・・・
常に憮然としたミシェル・ウィリアムズの演技も素晴らしく、90分に満たない小品だけれど、愛すべき佳作でした。