「Inscrutable are the ways of Heaven」私は絶対許さない いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
Inscrutable are the ways of Heaven
『人間万事塞翁が馬』と、劇中の主人公の実家に飾ってあった色紙が物語る通り、糾える縄のように、メーターの吹っ切った出来事が悉く主人公に訪れる、それこそ事実は小説よりも奇なりを地でいくストーリー内容である。『フォレストガンプ』のように愉快ならばいいのだけど、こちらははっきりとシリアスで非常にトラウマ的ダークな顛末なので、鑑賞後の何ともドンヨリ感はここ最近体験していない感覚である。バッドエンドとは違うがそこに救い様の無さがありありと見せられて、人間の悪という部分をまごう事なしに演出されている作品である。
確かに、ツッコミどころは数多いのだが、なにぶん原作未読なので、比較が出来ないからストーリー展開自体は語らないでおく。
POVの撮影手法は、ロシア映画『HARDCORE』で鮮烈にその演出方法を広めていったのだが、しかし今作品、これを取り入れたとの舞台挨拶での話だったのだが、果たしてそれは正解だったのか・・・件のハードコアは、ほんとにラストで初めて自分を客観視するカットを観客に見せているのだが、今作品は、ちょこちょこと主人公のもう一人の俯瞰した自分を登場させることで、そのもう一人の自分から観たシーンも観客に見せる造りになっているのが正直中途半端であり、復讐譚を予見させておいて、ミスリードをさせる展開に於いて、その手法で外連味を出す算段を目論んでいたようだけど、あまり効果的には感じられない。アバンタイトルの暴行シーンのみに使用すれば良かったのではないかと思う。それ程、あの異様に長いシーンは、観客を凍り付かせてしまう非常に厳しい内容なので、それ以降も感情先行の演出に疲労感がずっとついて回ってしまうのだ。
結局の所、運命ってのは人間を弄ぶだけ弄ぶという事がテーマなのだろうけど、映画作品としては、ユーモアを取り入れれば話が拡がると思うし、徹頭徹尾、モキュメントを貫くのならば潔かったのに、それも感じられない。正直、これは加虐と被虐の両方のマニア向けの作品ってことに堕とされてしまうことに成ってしまわぬのかと、些か勿体ないと思ってしまった。まぁ、別に主人公の女性はスーパーマンに成る必要もないし、偉人に成る訳でもない。あくまで自分に正直にそして誰の力にも頼らず生きるということを実践しているのだから、そういう人生もショーケースとして披露したということなのであろう。