「しっかりまとまった良作」夜明け告げるルーのうた みうらさんの映画レビュー(感想・評価)
しっかりまとまった良作
気にはなっていたものの、その独特なアニメーションと、何より湯浅政明監督自身の作家性があまり好みではなく、スルーしていました。
しかし、世評の良さと夜は短し歩けよ乙女との特集上映を機に鑑賞。
細かいところまで気の利いた、まとまりのある作品だと感じました。
多くの描写が後の展開の伏線になっており、それらを探すのがとても楽しく感じました。
また、日無町の描写も分かりやすく、どこに何があるのか分かりやすく描かれていた気がします。また、過疎りつつ田舎町の後ろでは、新幹線らしき鉄道が通り過ぎて行き、高速道路が通っており、時代に取り残されていく町の寂しさが伝わってきました。
人魚に噛まれると人魚になるという発想や、光に弱いといった設定も劇中で上手く活かされていたと感じます。特に壁が日光を遮ることで人魚を生かす役割があったという、言い伝えとその伝承を絵柄を変えて表現する手際の良い話し運びに、日無町の人魚に対する畏怖の念が伝わってくるようです。
そして、今作最大のポイントともなる音楽の心地よさ、気持ちのいいリズムが、気の利いたアニメーションと混ざることで素晴らしいグルーブへと昇華されているのではないでしょうか。
独特な絵で食わず嫌いをするにはもったいない秀逸な作品と出会えた気がします。
こんなにストーリーがあるとは思っていなかったので、期待値を下げて観たぶん、より一層面白く感じたのかもしれません。
私個人的には、同時に観た「夜は短し歩けよ乙女」より楽しく鑑賞できた、胸を張ってお勧めできる作品です。
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