「.」テイキング・オブ・デボラ・ローガン 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。日本劇場未公開作のPOV。土着的なモナカン族の民間信仰が絡み、序盤から黒い蛇が重要なアイテムとして登場する。超常現象を扱い乍らも合理的な説明として、ドネペジルやシナプスの陥落等、医学的な見地が盛り込まれているばかりか、このテのには珍しく悪魔祓いなど迷信とまで神父に云わせしめている。不気味な雰囲気でミステリアスに展開していくが、惜しむらくはラストを含め、判りにくい描写が何度かあったのがマイナス要素。こちらの理解力に問題もあろうが、もう少し判り易ければ、評価はグンッと上がった。60/100点。
・何と云っても、本作は“デボラ・ローガン”を演じたJ.ラーソンの全裸も厭わない体当たり演技によって成り立っており、本作のリアリティーは序盤の上品な容姿から終盤の姿は想像し難い程の彼女の表現力が負う所が大きい。尚、娘の“サラ・ローガン”を演じたA.ラムゼイと実年齢では僅か13歳しか違わない。
・モナカン族の血の儀式──初潮の血を捧げる“血を流す花”や'70年代初めに発生したルージュ川少女連続殺人事件、更にはALSを患った小児科医K.A.キャンベルの“アンリ・デジャルダン”、何かを知っている妖しげな隣人R.カトロナの“ハリス・スレドル”等、細部にも凝った設定が用いられている。
・現代医学では、劇中で描かれる様な脳のCTスキャンだけで、アルツハイマー病や認知症の進捗を診断する事は不可能であると云われており、死亡後の解剖によってのみ病状の進行や疾患の詳細が掌握出来るとされている。
・認知症が関連するPOVとの括りで『ヴィジット('15)』を彷彿させるが、本作の方が古い。医学的な説明をする際に脳内のシナプスの伝達を電話交換手と喩え、嘗ての職業として対比させただけでなく、憑依に至る小道具としても活用したのはユニークである。
・鑑賞日:2018年1月4日(木)