劇場公開日 2018年2月16日

「上質のピースを揃えても、驚くほどに中身がない」グレイテスト・ショーマン うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0上質のピースを揃えても、驚くほどに中身がない

2022年2月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「レ・ミゼラブル」の感動を再びと、期待して映画館へ運びました。楽曲の良さや、振り付け、歌姫の圧巻のパフォーマンスなど、細切れにすれば相当いい映画に見えます。

でも直近のアニメーション映画に「SING」というミュージカル作品があり、小心者の象とか、ギャングから足を洗いたいゴリラ、ちょっとボケている義眼のカメレオンばあちゃんなど、異形の者が活躍するストーリーと、親しみやすいヒット曲の数々、吹き替え版の頑張った作り込みによる歌の完成度、ショービジネスの世界での成功を夢見る展開など、かなり似ているのに、映画の出来として、ぜんぜん負けていると思います。

それから、ヒュー・ジャックマンについては、本領発揮と言いたいところですが役本来のバックボーンが足りなさ過ぎて彼がショービジネスを志す動機や、巧みに歌や踊りを披露する説得力がありません。彼のパフォーマンスは劇中における感情の爆発なのか、劇中劇の域を出ない物なのかあやふやで、サーカス団のメンバーと共に歌い踊りながら、劇中の観客たちの喝采を浴びます。だとしたら彼は一体どこでそのスキルを身につけたのでしょうか?「レ・ミゼラブル」には観客が存在しないので直接見る人の心に届くのですが、この映画はそうなりません。

確かに歌やパフォーマンスは素晴らしい出来映えですが、なんとなく入り込めない構造になってしまっていてとても残念です。ウルヴァリン役を卒業して、本気度が高いところをアピールしたいでしょうが、この映画の中では、あまりエモーショナルな振れ幅が無く、共感できませんでした。

ストーリーも淡白で、登場人物すべてが表面的な描写ばかりで、怒りとか、哀しみとか、それ一色に染まってしまいます。

「ラ・ラ・ランド」は深い悩みと愛情のすれ違いを、多彩なジャンルの音楽やあらゆるロマンティックなシチュエーションで見せる楽曲を揃えて、ラストまで目が離せないストーリー展開も含めてとても完成度の高いミュージカル映画でしたが、この映画、本当に同じメンバーで作ったの?と疑問に感じるほどガッカリさせられました。

2018.2.19

うそつきカモメ