「ハリウッドに求めてるのはコレだよ、コレ」グレイテスト・ショーマン ぷらさかさんの映画レビュー(感想・評価)
ハリウッドに求めてるのはコレだよ、コレ
やっぱりアメリカのエンターテイメントの一番の魅力は、こうした圧倒的にポジティブで肯定感溢るる作品に対して全力投球して、何のてらいもなく提示してくるところ。これ、そうそう真似できない。ステロタイプと言われようが、やっぱりアメリカという国は良くも悪くも、根アカでポジティブで強欲でストレートなのだと思う。
この映画のテーマは多様性=diversity。それを一つも捨て曲がないミュージカルで描く。
中でもKealaの歌う”This Is Me”はパワフルなメッセージを伝える。アナ雪の”Let It Go”や、LadyGagaの”Born This Way”とも通底する、「(あなたは)ありのままでいい」というメッセージ。こうした曲が繰り返しストレートに訴えかけるのを見るたび、日本も全く他人事ではないのだが、アメリカ社会ではどれだけ言葉の刃が日々、日常の場で飛び交っているのかと想像する。多様性に対して非寛容に向かっているように見えるアメリカ社会の現在とも無関係ではないだろう。
ヒュー・ジャックマンはじめキャストはみな好演しているが、中でも個人的に一番の発見はゼンデイヤの魅力。
主人公も、ゼンデイヤが演じるアンも、あなたにはわからないと言う。生まれつき恵まれている人間には、生まれによって、人から蔑まれる視線に晒されてきたつらさはわからないと。これは実際その通りで、映画で彼らの視点に立つことで観客はその視線を疑似体験するけれど、そのつらさをわかりきれるかと言えばもちろんそうじゃない。あらゆる局面でそうなんだけど、やっぱり相互理解の根底は「わかりきれない」ことを認識した上で、理解する/知るための努力をお互いに止めないこと。
VFXを多用しているせいか、映像の質感は好みじゃないんだが、これほどの歌と踊りの前ではまあ瑣末なことです。サントラは売れるだろうけど、やはり映像とセットで楽しみたいなぁ。
”This Is Me”はこのバージョンも素晴らしいので映画観た方はこっちも是非。→ https://youtu.be/XLFEvHWD_NE?t=59s