劇場公開日 2020年2月14日

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「ここはがんばって星を上げてみよう。」ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏 おかずはるさめさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ここはがんばって星を上げてみよう。

2020年2月21日
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鑑賞方法:映画館

このサイトでは評価が低いので、微力ながらこの映画を弁護したい。

クリステン・スチュワートはギリシャ彫刻を具現化したような美しい女優である。長年シャネルのアンバサダーを務めたその美しさに、圧倒されない者はいないはず。性別を超えた美しさでは比類ないこの女優があって、本作が成立した。

映画は、美しい物語を描きだし観客に物憂い人生を一瞬忘れさせることで成立する興行だ。美しい物語に説得力を持たせるには、美しい容姿を持つ俳優が必要となる。その前提が整ったとき、大衆を動員することが可能になる。
ことほどさように「物語」を宣布するためには、それにふさわしい象徴を必要とする。正力松太郎やゲッベルスはそのことを熟知していたため、大量動員に成功した。彼らより小さな成功例はいっぱいあるはず。

「サラ、いつわりの祈り」を書いたローラは、この小説が大衆に広く受け入れられるためには、その文学的価値とは別に、物語に説得力を付与するアバターを必要とすることを理解していた。繊細で少年のような外見。ローラがパートナーの妹に小説の主人公のイメージを見出したとき、「映画」は急速に駆動する。

ダイアン・クルーガーが演じるエヴァは、興行の世界でのしあがるために、一部の真実を知りながら、ローラが創出したアバターを利用する。映画だけでなく映画界においても「虚実皮膜の理」が支配しているらしい。

こんな小難しい話をしなくても、この映画は普通に面白い。バレる・バレないのサスペンスは最後までだれさせない。アバターに嫉妬するローラの演技はさすがオスカー女優の貫禄。

約110分間、物憂い人生から遊離できる映画だ。

おかずはるさめ