「感動」ギフト 僕がきみに残せるもの Takashiさんの映画レビュー(感想・評価)
感動
アメリカン・フットボールの最高峰、NFL。ニューオーリンズ・セインツのスティーヴ・グリーソンは特別なヒーローだった。ハリケーン“カトリーナ”に襲われたニューオーリンズの災害後初の、市民が待ちに待ったホームゲームでチームを劇的な勝利に導いたからだ。
それから5年後。すでに選手生活を終えていたグリーソンは、病院で信じられない宣告を受ける。「あなたはALS(筋萎縮性側索硬化症)です」。そして、同じ頃、妻ミシェルの妊娠がわかった。初めて授かった子供。だが自分は、生きている間に、我が子に会うことができるのだろうか。生まれ来る子のために、自分は何が残せるのだろうか。グリーソンは決めた。まだ見ぬ子どもに贈るために、毎日、ビデオダイアリーを撮り続けると。本作は、グリーソン自らが撮影した映像と、彼の旧友で介護者ともなったが2人の撮影者がグリーソン一家とともに暮らしながら撮影した映像からなる、パーソナルなビデオダイアリーから生まれた。グリーソンは彼が経験する旅、イベントから火をおこす方法、デートの仕方、残せるものをすべて、父親として我が子に残したかった。同時に彼は自身の父親とのぎくしゃくした関係についても修復しようとした。 この映画はいわゆる「難病ドキュメンタリー」ではない。誰もが共感できる父と子の物語、そして家族の物語である。そのパーソナルな映像は、前向きに病気に立ち向かう姿だけではなく、刻々と変化する病状に対する不安もあれば、看護に疲れた妻とのケンカもあり、生きることに絶望する日もある。しかし、きれいごとではなく、ありのままを見せ、ユーモアを忘れずに日々を乗り越えていく彼らの姿は何よりも大きな感動を観客にもたらすのだ。映画は、スティーヴと妻ミシェルが設立した非営利団体チーム・グリーソンの重要メンバーである元チームメイトのスコット・フジタやキミ・カルプらのアイデアにより、ビデオダイアリーから映画への道を歩み始めた。監督は『プリント・ザ・レジェンド』(2014/日本未公開)や『ファインダーズ・キーパーズ(原題)』(2015/日本未公開)などの秀作ドキュメンタリーで知られ、編集・音楽まで手がけて多彩な才能を見せるクレイ・トゥイール。グリーソンから渡された1500時間のビデオダイアリーから、ドキュメンタリー映画の傑作を誕生させた。プレミア上映となったサンダンス映画祭には、グリーソンと家族も登壇。嵐のような賞賛を浴びた。以来、全米で30近い賞を受賞&ノミネート、全米映画批評No.1サイト「ロッテントマト」で驚異的な97%というハイスコアを記録している。 病と闘うグリーソンを支援するミュージシャン、エディ・ヴェダー(パール・ジャム)が楽曲を提供するだけでなく出演もしているのも見どころである。