「心待ちにした最高の最終章ではなかった」HiGH&LOW THE MOVIE 3 FINAL MISSION そのださんの映画レビュー(感想・評価)
心待ちにした最高の最終章ではなかった
ドラマ、映画シリーズとすべて追いかけてきて、心待ちにした最終章。
正直に感想を一言で言うと「つまらない」だった。
映画自体のおもしろさとは別の意味で。
子供の目で大人の世界を見た時の「つまらない」という思いと同じ。
自分が拳をぶつけたい相手が、どうしても手の届かないところにいて、そこに呆れるような力技で拳を伸ばしてくれるのがハイローだと思っていた。
結局拳は届くことはなく、別の方法で解決?したのが今作だが、それならハイローでやらなくても良かったのでは。
監督や脚本家の「SWORDや琥珀たちを次のステージに進ませてあげたかった」という言葉があったが、その思いを実現させるために急いで辻褄合わせをした作品という印象。
SWORDや琥珀たちが自ら進んだのではなく、外野の思惑で進まされたような。
それが大人の世界と言われるとそれまでだが。
残念だったのは、カジノ計画の阻止がメインに来たせいで、SWORDが横に押しやられたところ。
スモーキーとSWORDが最後まで明確に繋がらなかったのが何より残念。
スモーキーは家族のために、自分の信じる道を進み、その背中にSWORDはじめ周囲が勝手に感銘を受けたという、一方通行に近い展開に見えた。
SWORDの5色の衣装を着ていることから、スモーキーの心の中には、家族だけでなく、SWORDの未来を願う気持ちもあったと思うが、それをきちんと作品の中で示してほしかった。
ドラマでも映画でも、スモーキーはSWORDの共闘から離れた所にいて、各チームの頭の顔も覚えてるのかも怪しい気がしていたが、結局そのまま終わってしまった。
あとは、各チームの頭の発言がどうも腑に落ちなかった。
村山のネットで叩く発言はいいとしても、その後に続く「俺達のほうがよっぽどいい大人になれる」というのは、さすがに違和感があった。
その考え方の根底にあるのは、ネットで人を叩く人間と同じものでは?
そんな世俗のいざこざを超越したところで、村山は飄々としているイメージだったので、彼のスケールの限界のようなものを感じてしまった。
そして、ロッキーは日向に「復讐なんてチンケ」と言う。
日向は黒白堂の対決に駆けつけて、「それがSWORD協定」と啖呵を切って加勢してくれた。
EOSのこのシーンを見るたび、ロッキーはこの時どんなに嬉しかっただろうと目頭が熱くなる。
そんな大きな恩のある日向に対して、そんなこと言う?
ほんの数日前に、自分が本当に苦しいときに助けてくれた人に?
悪気がないのは明白だが、やはり、ロッキーの言葉としては違和感があった。
そして琥珀の「正しく生きろ」。
あなたが言うのか、と思う。
一度道を踏み外して、そのせいで死んだ人もいて、仲間の助けがあったからこそ立ち直れたという過去があった人が、上から目線で人に正しさを求める?
思いとして持っていたとしても、「正しく生きろ」なんて言葉にする?
今回は、これまで彼らが拳や行動で語っていたものを、言葉に置き換えたせいで上のような違和感を感じているのだと思う。
加えて、自分はSWORDの頭をとんでもなく格好いい人たちと信じ込んでいるところも今作ではマイナスに作用したと思う。
(違和感を受けない人もいるはずだから)
今までずっとSWORDを追いかけて来た者としては、「それがSWORD協定じゃー!」と、熱がピークに達した時に冷水を浴びせられたような思いだった。
制作側は満足の出来のようで、高評価の方もいらっしゃるため、ただ自分勝手にハイローを好きになりすぎただけとも思う。
FM鑑賞後、大好きだったハイローなのに、なぜ素直に「最高だった」と言えないのかと落ち込んだ。
そこで同様に感じた人のレビューを見て、自分だけじゃなかったんだと救われたところもあるので、自分の思いを書いた。
自分は「泣ける」「格好いい」「アクションが前代未聞」なんて肩書よりも、「SWORDの終わりだ」という言葉の通り、SWORDをど真ん中に据えたSWORDらしい最後の祭りが見たかったよ。
だから中途半端に今後のスピンオフを想定したような台詞も、小賢しく感じてしまった。
SWORDの終わりと共に、自分のハイロー熱も終わりとなった。
自分の心待ちにした最高の最終章ではなかったが、見ることができてよかったと思う。