劇場公開日 2025年11月14日

「イキってたネオナチがオロオロし始め、予想のつかない展開になるのが面白い」アダムズ・アップル 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 イキってたネオナチがオロオロし始め、予想のつかない展開になるのが面白い

2025年12月6日
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鑑賞方法:映画館

キリスト教でいう旧約聖書、
ユダヤ教では唯一の聖書の、
39(+α)ある文書のひとつ
「ヨブ記」の現代版。

「ヨブ記」は、
敬虔な信仰者に見えるヨブだって、
苦難を与えれば信仰などあっさり棄てるだろう
と主張するサタンに対し、
神が「それなら試してみよ」と言っちゃって、
ヨブがめっちゃ苦難に遭う話。

イスラエル王国が紀元前10世紀に分裂し、
紀元前8世紀に北王国が、紀元前6世紀に南王国が滅亡した後くらいに成立したことを考えると、
「神はなぜ、苦難を課すのか」という疑問に答える必要性から生まれた書なのではないかと思われる(めっちゃ私見)。

ヨブは結局、
苦難にも耐え、論争にも耐えて、
神による再評価を勝ち取る。

そういう過程を
イスラム圏からの移民かつテロリストと、
そのカウンターたるネオナチと、
さらにはナチスの下っ端の生き残りを登場させて、
ブラックなユーモアたっぷりに、現代に甦らせた感じ。

冒頭、登場するやいきなり、降りたバスに
なんの意味もなく(なんかムカついてたんだろう)傷をつける、悪党としか言いようのないアダム(ウルリッヒ・トムセン)が、

一見寛容そうなんだけど、どうやらかなりぶっ飛んでる牧師イヴァン(マッツ・ミケルセン)相手に、
最初はイキってたのに、だんだんオロオロし始めて……予想のつかない展開になっていくのが面白い。

「信ずるものは救われる」っていう単純な話じゃない、と思うんだけど、
結果的にはそういうことになるのか。
まあ、鰯の頭も信心から、って諺もあるし。

島田庵