「シンプルでオーソドックスなジョーズもの」海底47m Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
シンプルでオーソドックスなジョーズもの
昨夏の「ロスト・バケーション」(2016)の大ヒットを受けて、本来は劇場スルーのDVD予定作品を劇場公開に切り替えた低予算映画である。それなりにスリリングではあるが、"B級ジョーズもの"といって差し支えない。しかし、そのもくろみは、見事に成功している(全米初週5位)。
海中に下ろした檻(ケージ)の中からサメに近づいて観る"シャークケージダイビング"に挑戦したリサとケイトの姉妹2人。水深5メートルで鑑賞するはずだったケージのワイヤーが切れて、水深47メートルまで沈んでしまうというパニックスリラーである。
快作「ロスト・バケーション」が設定も斬新で、主演女優(ブレイク・ライブリー)も美しかったのに対して、本作はオーソドックスなジョーズもの。怖さも初心者向けで、人が死んでもグロテスクなシーンはまったくない。ダイビングの基礎知識が散りばめられており、それらが緩急のある展開の伏線になっている。
予算が少ないのでロケーション映像が良くない。曇り空でも平気で収録しているし、美しい海の映像もほぼない。海底シチュエーションをいいことに、"真っ暗"ないしは"視界不良"で、専用プールでの撮影で済ませていることは想像に難くない。
奥手で怖がり屋のリサが急に積極的になったり、水中銃や水中発煙筒やライトがタイミングよく入手できたり、ダイビングのシロウトのはずなのに、ひとりで簡単に酸素ボンベのバルブ交換ができるなど、実に都合がいい。
ネガティブな点を並べてしまったが、オーソドックスなスリラーを、難しく考えずに楽しむという意味では、尺も短く(90分)、シンプルでいいかもしれない。
(2017/8/13/丸の内ピカデリー/シネスコ/字幕:石田泰子)