「薄っぺらいC級Vシネ」ろくでなし Tarouさんの映画レビュー(感想・評価)
薄っぺらいC級Vシネ
全ての登場人物の設定がどこかから借りてきたようなチープさ。
冒頭の主人公のキャラや行動の方向性を描くチャンスを無駄な歩きや食物を貪る描写で浪費し、開始1分で雰囲気だけ映画ということが予感できる。
主人公であるはずの男の描写をおざなりに、ヒロインや別のヤクザの描写が長々と続き、何を描きたい映画なのかもわからず、もやもや。
主人公がヒロインにひとめぼれする描写も、むだなクロスカッティング。表現が古い、上に安い。
しかも、言葉もろくに話さず、すぐ手が出る荒くれ者キャラが、ヒロインと出会って豹変。急に童貞かと思うほどシャイなキャラになる。
かと思いきや、ヤクザ同士ではキザなセリフを吐く。極めつけは、ヒロインに「思ったことは心に溜め込まない方がいい」的なセンチメンタルなセリフをのたまう。キャラがブレすぎて、もはやギャグ。
最大の芝居場なんだろうが、主人公とヒロインがケンカになるところでは、金のために体を売ろうとしたヒロインに対して、主人公がずっと鼻をすすって泣きながら説得するのだが、気持ち悪くて見ていられない。
準主役的なヤクザも、なぜ女子高生と付き合っているのかも説得力がまるでない上に、同級生から告白された女子高生に対して嫉妬したりする描写も考えられない。大のヤクザが女子高生にマジでキレる意味がわからない。この話に出てくる男は幼稚な面しか見えない人間ばかり。ろくでない人間を描くなら、ろくな面を描かずしてどうする。
終盤、準主役ヤクザが、女子高生の顔を掴んで、しばらく無言の後、
「お前ってこんな顔してたんだな」というセリフは爆笑もの。
ラストの主人公が警官に囲まれる描写ももはやため息しかでない。
物からPANして人物になるカメラワーク、次のシーンの音のズリあげ、いちいちがダサい。二時間サスペンスである。
演技力のある俳優を全くいかしきれていない最悪の見本。
お金と時間を返してほしい。