怪物はささやくのレビュー・感想・評価
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12:07
家の窓からから見える巨大なyew tree。この大木が、ある時刻になると目覚めてMonsterに化けます。よく喋る高齢Grootといった感じ。墓地に植えられていることから死を受け入れる象徴のようでした。
Monsterが語る最初の2つの物語は、死が絡み善悪が不鮮明な内容で、滲む水彩画に良くマッチしていました。3つ目の物語はもう少し工夫して欲しかったです。
Monsterの声を担当したLiam NeesonはConor少年の祖父として写真に写っていました。Monsterはおじいちゃんの化身か?!って訳ではないようで。
互いの想像力とスケッチを通して、危篤の母と残される息子との対話とも読めるし、もしかしたら母親自身も、父親(つまり少年の祖父)を幼い時に失くした際、Monsterに癒されたのかも知れません。
母親の病、両親の離婚、祖母への反発、学校でのいじめ、と様々なストレスから怒りを噴出させる13歳の少年。心が壊れるくらいなら、家具を壊すことなど大したことではない。少年の祖母にとっても、夫に加え娘にも先立たれるという不運を乗り越えなければなりません。人生はままならないこと、折り合いをつけて受け入れていかねばならないという、大人になってもなかなか難しい教訓がテーマのようでした。
"Most of us just get messily ever after."
よかった
悲しい話で、主人公がその内面の現実と向き合う、よくできた話だったのだが、よくできてると言わせたい感が強い。もうちょっといびつな話でもいいのではないかと思う。特撮映像が素晴らしかった。
いじめっこがそんなに意地悪な顔をしていないところがリアルだった。その取り巻きの子分みたいのが手を踏んづけてムカついた。
お母さんもつらいが、何より友達がいないのがつらいのではないだろうか。
4つ目の物語
とにかく画面が綺麗で、水彩調のアニメーションも美しい。それだけで映画館で観て良かったなと思える一本。
派手すぎず地味すぎず、いい案配だなと。また、コナー少年の陰のある雰囲気も良かった。
彼が4つ目の物語で「僕が殺した」と叫ぶシーン。じつは母親の薬を入れ替えてたのかなとか深読みして、そんな自分への罰へとしてイジメられていたのかなあと。
TOHOシネマズみゆき座にて観賞
成長型空想ファンタジー作品としては定型を踏襲しており、さほど独創性があると思わなかった。
赤い火花が内部から散る怪物は、ここ数年で何匹目だろうか。
しかし、話も演出も弱さは無い。
目を見張る構図が時折あり、アニメーションには見惚れる美しさがある。
ルイス・マクドゥーガルを抜擢したのも大きい。孤独だがどこか目に強い意志があり、これが物語の核心になっているのは唸る。
シガーニー・ウィーヴァーもいつになく良い。
観賞後に原作者の一人が病に倒れていたことを知った。最後の少年と母親の繋がりを思い返すと、今頃泣けるではないか。
難解
この話しのどこにファンタジーを感じろというのか…?
そんなお気楽な感じで観てられる内容じゃなかった。人じゃないモノが出てきたら全てファンタジーなのか?
夢や希望的な話しは一切出てこない。
「死」という逃れられない運命を乗り越えるとかじゃなく、どおやって受け止めるかっていう滅茶苦茶現実的な話しだったし、またその「死」と向き合うがため、母親が死んでくれたら楽になると思っている自らを認めてあげるとか、なんとかかんとか。
その他、内包してる話も非常にシビアで…イジメやら離婚やら、大人への不信感やら妄想癖やら、とんだ社会派な作品だたよ。
また、映画の宣伝部にいっぱい食わされたような感じだ!
なもので…俺のアンテナはそんなトコには向いてはおらず、故に非常に退屈だった。
12:07の種明かしは、なんだかとても微妙な感じで…あちらさん的には神という存在が確固としてあるから、その采配的なような事なんだろうけど。
母の死と入れ替わりに現れる祖父の化身とかって、彼単体とは全くリンクしないような気がして…。
彼はそんなものを自ら産み出さないように思えてしまう。
まあ、面倒な話しだった。
子供に読んでほしいなとか全く思わなかったな…。
あれだな。
物語が揶揄するものが純粋で崇高過ぎて、捻くれたオッさんには理解しきれないって事だな、たぶん。
成長する少年の死への葛藤物語
子供から大人へ成長する多感な時期に迎えてしまう、母の死を受け入れる為の物語。
アニメーションも綺麗で、少年の涙も綺麗で何度かこちらも泣いてしまいました。
自分の罪を誰も裁いてくれなくて、余計に追い込んでしまう。「僕のことはいいからお母さんを助けて!」って言うところも、少年の優しさが溢れ出ていて泣いた一面です。
怪物が現れた意味も分かっている少年は足掻き、死を受容していく。
最後のシーン、あれは結局、怪物の生みの親は母親ということ…?母親も同じ経験があったってこと…?
その辺りは理解しきれませんでしたがあれも、母と繋がっていると少年が実感出来て良かったと思いました。
優しい話ではある
嫌悪や怒りや諦めなど、自分の中にある負の感情を肯定してくれる話。そういったものに向き合い、受け入れることは「勇気」だと、伝えてくる。
怪物がコナーの色々な内心や、薄々察知している事を表面化する。嫌悪している祖母は悪人ではないし母は誰のせいでもなくただ死に向かっているのだということ。信じれば母の病気は治るのだという願望と、母の死を仄めかしてくる祖母や父に対する失望や怒り。居場所の無い寂しさを打ち消す為に、それから自罰の為に、暴力を受けていること。自分を罰したいという願望の裏にあるのは、母の延命を望むのと同じ位かそれ以上に諦めたがっている後ろめたさである事。
「僕は自分から手を離した」と打ち明けることで、コナーは自身の弱さと向き合い、母の死を安らかに受け入れる事ができる。
負の感情や、人の心の複雑さや、善悪の多面性を、「そういうものだ」と受け止めてくれる作風は優しいけれど、なんかヌルいなぁ…と感じてしまった。ファンタジー側の画と現実側のストーリー展開の、2点で。
第二の物語で部屋をめちゃくちゃに荒らすあたりまでは、制御できない怒りや、それに恐れおののく様子がうまく描写されてる印象だったんだけど。
第三の物語で同級生に暴力を振るうシーンや、第四の物語での母の死を象徴する悪夢は、サラッとしすぎというか、もっと恐ろしく描いても良かったと思う。一番メインの第四の物語「母の延命を諦めたい、疲れた」なんて認めるの、物凄く恐ろしいはず。万能感に包まれた子供時代を抜け出しきれていない年頃であれば尚更、醜く弱い諦めの気持ちと希望を持ち母親を愛する気持ちとの葛藤は強いだろうと思う。自分に向き合う恐怖心を描くなら、もっとエグくて目を背けたくなるような心象風景になっても良かった気がする。(パンズラビリンスのスタッフ、っていう宣伝文句があるから余計そう思うのかも知れないけど…戦争描写の残虐さやファンタジー世界のグロテスクさがすごかったので、恐ろしいものを恐ろしく描く技術、もっとあるでしょと思う。)
また、コナーは自分が何かしでかすたびにそれでも罰が与えられない事にショックを受けるわけだけど、大人たちはコナーに罰を与えない。寛大で賢明な判断とも取れるけど、ヌルいといえばヌルい。コナーが「自分でも分かっている」事に、大人は気づいているのだと思う。ただでさえ自分と向き合っていく最中の難しい年頃で、そんな折に母親の病気という辛い現実に直面して、やり場のない悲しみや怒りをうまく発散できない。負の感情と上手に付き合うにはそれなりの訓練が必要で、まだそれができてない年頃だから、失敗して物や人を傷つけても、罰は与えない。コナー自身も自省して何が悪かったか理解しようとしているから。
罪を自覚した時点でその人は赦される、っていうのは精神世界的な信条としてはアリだけど、やっぱり現実の社会では(いくら未成年でも)やらかし過ぎたら取り返しのつかない事になるので、なんかそこの、ファンタジーにおける赦しと、現実世界における許しは混同しない方が納得感あるなぁと思った。
逃げたい少年に、ベビーグルート系怪物が、ホントのことをぶっちゃける
まさに今年、スペインのアカデミー賞と言われるゴヤ賞で最優秀監督賞ほか9部門を受賞したファンタジー映画だ。見終わって、少し経ってからの方がじわじわくる。
画面ヅラは、VFXによる"イチイの木"の怪物が現れるファンタジーだけれど、"死"と向き合うという子供にとって重いテーマを扱う、悪夢な映画である。
原作小説は、英国人作家パトリック・ネスによる児童小説。2012年の英国児童文学最高峰の"カーネギー賞"(The Carnegie Medal)と、最も優れた絵本の画家を表彰する"ケイト・グリーナウェイ賞"(Kate Greenaway Medal)を同時受賞した傑作。絵本というより、コワい挿し絵の、スゴい児童小説というべきか?
教会の墓地が見える家で、難病の母と2人で暮らす少年コナー。離れて暮らす祖母と、離別した父がいる。ある晩、墓地に立つ"イチイの木"が怪物となって現れる。
怪物は、これから3つの"真実の物語"を語ること、そして4つ目の物語は、コナー自身が嘘偽りのない"真実"を語るように告げる。怪物は、少年コナーの悪夢なわけだが、嫌がるコナーをよそに、毎晩同じ時間に現れ、ひとつずつ話を聞かせていく。
現実の世界では、大人たちは、子供のコナーに気を使ってほんとうのことを言ってくれない。重い病気の母との別れが迫っていることぐらいコナーだってわかっているのに。そして実は、身近な"死"を受け入れていく術を、怪物は諭していくのだ。
クライマックスで、コナーが覚悟を決める、第4の話が切ない。"死"を本当に恐れているのは、"死"を受け止められないことなのではないか。児童小説の問いかけとしては、とても斬新だ(オトナでもキビシイ)。
主人公のコナーを演じるのは、ルイス・マクドゥーガル。「PAN ネバーランド、夢のはじまり」(2015)に出ていたというが、脇役なので憶えていない。しかし家族の配役はすごい。母親がフェリシティ・ジョーンズ(ローグ・ワンのヒロイン)、祖母がシガニー・ウィーバーだ。そして、"イチイの木"の怪物に、リーアム・ニーソンがモーションキャプチャーで参加している。声優だけではないので、顔がそのまんま(笑)!
今年は、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」(2017)でも、"ベビー・グルート"が大ウケしているが、"樹木系キャラ"が流行りか。
(2017/6/11 /TOHOシネマズみゆき座/シネスコ/字幕:藤澤睦美)
少年の成長
あまりにも辛い現実だけど、それを乗り越えるには、対峙しなければならない。それを認めて、自分の本当の気持ちをごまかさないこと。身近に共有できる人がいたら、甘えたらいい。シガニーウィーバーは、いい味出してました。そして、少年役の子が素晴らしかった。やりきれない思いの表現に涙しました。ラストも母子の繋がりが垣間見えました。
コナーが見ていて辛すぎました
安易に希望を持たせるようなことはせずに、主人公の直面している行き場の無い、不安で孤独な状況を描いた点は評価できます。
しかし、殆ど治る見込みの無い母親の病気、学校でのいじめ、新しい家族との生活を犠牲にする気の無い父親の態度、高圧的な祖母・・・たまりかねてのコナーの感情爆発、それによる事態の更なる悪化などなど、たたみかけられるうちに見ているのが苦痛で仕方なくなりました。
せめて好きな絵を描きながら想像の世界に逃げようとしても、そこでも容赦なく現実が突きつけられるし。
「怪物」はコナーが生み出したものだと最初から分かってしまったので、余計に見ていられなかったのかもしれません。
もっと謎めいた仕掛けだったら良かったのに・・・
コナーが最後に「怖い」「(ママ)逝かないで」と言えたことで、ついに現実へ向き合うことができた、ともかく一歩は前に踏み出せたという感動があるのでしょうが、逆にここまで追い詰められた12歳の少年の境遇に、周囲の大人への失望が消し去れません。
もう少し何かできなかったの?と。
これから精神的支えになってくれる人がいるようには思えず(そこは皮肉にも上手い)、今後も彼は怒りや諦めを一つまた一つと抱えて生きていくのでしょう。
それが大人になることなのかもしれませんが、本当に人生って酷。
実はこういう子供って気づかないだけで身近に沢山いるんでしょうね。
胸が痛くてつぶれそうな話でした。
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