「「あなたが悪いのではない、世の中とはそういうものなのよ」」怪物はささやく odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
「あなたが悪いのではない、世の中とはそういうものなのよ」
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児童文学にしては観念的であり母親との死別への恐怖、上辺だけの繕いに見える大人社会、現実社会での理解者を得られず悪夢に苛まれる少年の物語である。重いテーマを掲げており、反抗、破壊に対して異様なほどの共感、寛容を示す作家性の強い話だ。どうしたらこのような視点で児童文学が書けるのか気になって調べてみたら英国の作家シオバン・ダウドの未完成の遺稿を脚本のパトリック・ネスが引き継いで完成させたようだ。シオバンは乳がんで47歳で死亡している、作家と並行して恵まれない子供たちや、若い犯罪者の救済活動にも腐心していたようだ、そんな子供たちの心に寄り添うには綺麗ごとのお伽噺ではなく不条理な現実社会を暴いて見せる手法が必要と気づいたのであろう。活動を通じて得た教育者としての信念と自身の死期を悟って鬼気迫る物語が出来上がった。
「あなたが悪いのではない、世の中とはそういうものなのよ」という作者の無償の愛のメッセージは、もはや評価の域を超えているのだが個人的にはこの種のダークファンタジーは苦手、映画にしてまで辛いことの追体験をしたいとは思えないので致し方ない。
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