「大人になったベビー・グルート」怪物はささやく kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
大人になったベビー・グルート
病魔に侵された母親リジー(フェリシティ・ジョーンズ)と二人暮らしの13歳の少年コナー(ルイス・マクドゥーガル)の家に、夜な夜な12時07分にやって来る木の怪物(声:リーアム・ニーソン)。「今から、お前に3つの真実の物語を話す。4つ目の物語はお前が話せ。」と怪物はコナーに告げるのだ。ママのことが大好きで、現実とも夢とも区別がつかないコナーはママのベッドにもぐり込む。5分だけね、5分だけ・・・
祖母とはそりが合わず、絵が好きでいつも空想ばかりしていて、学校ではいじめっ子に殴られるコナー。で、強くなりたいという願望の具現化なのかと思わせるほど巨大な怪物。曾祖父が持っていたという映写機で見た『キングコング』が関係あるのかもしれないと想像しつつも、母親の言う“癒しの木”とも関係ありそうな、不思議な巨木なのだ。
怪物の1話目は黒の王妃と若き王子。後妻となった王妃が王様を毒殺し、1年間摂政になったが、さらに王子に求婚して王制をわが物にしようとする。王子には農民の娘という民も認める恋人がいたため駆け落ちするのだが、木の下で恋人が殺されてしまうのだ。王子は王妃が犯人だとして失脚させる・・・しかし、真実は王様は老衰のため死亡し、恋人を殺したのは王子だというとんでもない話。
2話目は薬師の秘薬。村で慕われていた牧師が効かないと吹聴したため薬師は職を失う。しかし、最愛の二人の娘が病気になり、医者の治療でも治らなかったために、牧師は薬師の薬に泣いてすがるのだが、治そうとせず、そのまま娘たちは死んでしまった。巨木は牧師の信念が無いと怒り、牧師の家を破壊したのだ。コナーの前から巨木が姿を消したと思ったら、コナーは祖母の部屋の家具を破壊しまくっていた・・・
3話目は透明人間の男。誰にも気づかれないため透明になった男がするべきことは、無視する奴を殴れ!(短か・・・)と、コナーはいじめっ子のリーダーを殴って殴って殴り倒していた。訴訟を起こすとまで言われ、祖母に対しても迷惑かけっぱなしのコナー。コナーに会いに来ていた実父に対して「罰しないの?」などと問う。やがて、祖母とは最初からやり直そうと前向きな言葉をもらって落ち着くが、その後、巨木の怪物から「真実を話せ」と迫られる。
巨木の怪物はどことなく不条理でメタファーだらけの真実の話。コナー少年は母に関する真実を語るのだが、それもちょっと現実的すぎる内容でした。キングコングはどうなったんだ?などと考えているうちに素直に感動することを忘れてしまいました(真実)。それでも、祖母が用意してくれた新たな部屋と、母親の遺したスケッチブックに描かれた真実の物語の絵には不思議な因縁を感じ、じわりと心に染み入る作品となりました。