「ピースを埋めるだけの作業」猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー) うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
ピースを埋めるだけの作業
これで終わりなのか。少なくとも、アンディ・サーキスの黒子としての名演技はこれで見納めなのだろう。『スターウォーズ 最後のジェダイ』のメイキングを見る機会があり、アンディ・サーキスのスノーク役の名演技を、モーションキャプチャー状態で見ましたが、言わば無修正版のライブ演技。その加工前の演技を監督のライアン・ジョンソンが絶賛していたのでメイキング映像として収録したということでした。
確かに、加工してCGキャラクターとしてサーキスの演技が見えなくなってしまうのは残念と思えるほどの白熱の名演技でしたが、しょせんは、映画の一部で使われたフッテージに過ぎず、それが観客の目に触れる機会が永久に来ないことが残念だった、という監督の気持ちがよく理解できるほどに、アンディ・サーキスのキャプチャー演技は素晴らしいものがあります。
たまたま、『ブラックパンサー』に悪役で出演していた時には、生身の人間(笑)役だったので、ちょっと貴重な映像だなと思いましたが、さほど心に刺さる演技と言うほどのこともなく、俳優って、限定された状況で光る人もいるんだな、なんて、妙に感心したものです。
それ以外に、この映画に心を動かされた要素はなく、ひたすらパズルの残されたピースを埋めるための「作業的」なお話になってしまい、作り手の情念とか、キャラへの愛情みたいなものが欠けている気がしました。特に人間の少女と、サルたちの心の交流など、もっと時間を使って掘り下げる必要があったのではないでしょうか。彼女の本当の親がどうなったのかとか、命がけでサルたちに守ってもらうとか、何とでもなったほずです。
いずれにしろ、人間の文明が荒廃して、サルたちが隆盛を迎えるまでの失われた物語を綴るシリーズはこれで終焉を迎えたのです。映画が当たればそれでも続編が製作されるでしょうが、中途半端なヒットでは、その目もなさそうです。
本当は、人類の文明が衰退する前に、光速で移動できるロケットが打ち上げられ、中でパイロットが冷凍睡眠状態になっている記述がなければ、『猿の惑星』とは言えないと思います。だって、あのグランド・フィナーレにつながらないから。