劇場公開日 2017年8月25日

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「全く異質で、共感できない」エル ELLE みうらさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5全く異質で、共感できない

2017年8月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ポール・バーホーベンの新作ということで、前知識等はなしで鑑賞しました。

高橋ヨシキさんが、何かのコラムで本作を「共感病」に対するアンチテーゼと仰っていましたが、全くその通りだと思います。
主人公のイザベル・ユペール扮する主人公ミシェルはもとより、登場人物の全てに共感ができず、私の観念がおかしいのかと頭がクラクラします。

映画冒頭、レイプされるミシェルのシーンから始まります。彼女に対して観客は共感し、同情する。しかし、その後彼女は一通り叫ぶと、警察を呼ぶでも、怯えるでもなく、至って冷静に割れたガラスをゴミ箱に捨て、服を脱ぎお風呂に入るのである。
ここに至って観客はレイプされた彼女から同情の気持ちが少しずつ離れて行く。そのあとは、ひたすら共感できない登場人物たちの共感できない行動の数々。
本当に全てが共感できない。
ミシェルの職業がゲーム会社の社長というのも共感しづらく、彼女の車の停め方も道の真ん中すぎない?と気になる、気になる。
ハリウッド映画などに観られる、ありきたりな内容に常に挑戦し続ける。母を許さず、父も許さない。感じのいい息子の彼女にも継母のようないじめを行い、嫌いな相手に対しては常に目線を合わせず話す。

出てくる人全てがネジ一本飛んでるんじゃないかと思えてきます。
しまいには、レイプされた犯人に事故の助けを求めたり、食事会をしたり。

普通の映画であれば、こんだけ共感できなければつまらない駄作と言われても仕方ないかもしれないし、実際そう思った人もたくさんいると思います。
しかし、シンメトリーの画面構成に、テンポのいい会話で、決して短くない上映時間を退屈せずに観ることができました。

バーホーベン監督のブラックなジョークも健在で、ミシェルの息子が子供を授かった時、肌の色が全然違う子供が産まれ、親友がニッコリというダークな笑いも。

こんだけ共感できないと逆に気持ちがよく、楽しくなってくる作品。老齢にしてまだまだ健在なのが垣間見えます。

共感できない主人公にイライラしてしまう人にはオススメできませんが、私個人は好きな作品です。

ヨシマサ