「辛すぎる過去のあやまち」マンチェスター・バイ・ザ・シー 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
辛すぎる過去のあやまち
リー(ケイシー・アフレック)にとって、生まれ故郷の
マンチェスター・バイ・ザ・シー(アメリカの地名)に帰ることは、
あまりにも辛すぎる。
ボストンでアパートの修理などの便利屋をしていたリーはに、
兄ジョーの急死の知らせが届く。
駆けつけたリーは葬儀の準備に追われる中、
甥っ子のパトリック(ルーカス・ヘッジス)の後見人に、
兄がリーを指名したのを知る。
そしてマンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ると、
「あれが例の事件のリーか?」
町の人の好奇に晒され、二度と思い出したくない
「過去の事件」と向き合うことに。
葬儀の準備が進む中、
過去の様々な映像がリーの脳裏に浮かぶ。
その事件の夜。
真っ赤に染まり燃え盛る我が家。取り残された幼い子供たち。
立ちすくむリーのシーンに、アルビニノーニの「アダージオ」が、
悲しみの火に油を注ぐように、
荘厳なパイプオルガン演奏が鳴り響く。
(リーは警察署でもっともっと厳しく処罰して欲しかっただろう・・・)
(罪に釣り合う程厳しく罰されたらどんなにか楽だったかもしれない!)
映画は甥っ子のパトリックのシーンになると、
軽めのユーモアが散見する。
二股交際の女の子や、
その女子の家では、20秒ごとに母親が現れて、
声をかけたり・・・
バンドにアイスホッケーにバスケと、
青春を謳歌するパトリック役のルーカス・ヘッジスは、
ジェシー・アイゼンバーグ似で、繊細さとやんちゃ少年ぽさが
魅力的。
パトリックはリーよりずっと世慣れて大人だが、
父親の遺体の冷凍に怯えて、
冷凍庫のチキンにパニックになったりして、
まだまだ子供。
後見人になったリー。
兄ジョーの遺した船でパトリックと過ごす時間は、
リーの苦しみも癒してくれそう。
子供を失った悲しみ。
母親役のミシェル・ウィリアムズ。
リーと会うとどうしようもなく心が乱れる。
互いに会うことが傷に塩をなすり付けるよう・・・
とても、分かる気がする。
リーの罪はたとえ妻から許されても、
消えることはないし、
自分が一番、自分を許せないのだから。
人間は過ちを犯すもの。
悲しいけれど、どんなに絶望しても、
人は生き続けなくてはならない。
パトリックと船が、少しは手助けしてくれるだろう。
琥珀糖さん
こんにちわ、
沁みる映画でしたよねー。
僕は弟とも息子とも上手くいっていないものですから、だからこの映画には取り乱しそうでした。
そうそう琥珀糖さん、ご存じですよね?
雲間から太陽の光が、地上や海の上へ放射状に差しおろす現象。あれ見たことありますよね、「天使のはしご」と言うニックネームが付いていますが、あれ”正式な“気象用語では「薄明光線」と呼ぶのだそうです。
薄明光線を見ると思い出す映画の一本です。
琥珀糖さん
みかずきです
共感&コメントありがとうございます。
レビューを評価して頂き、ありがとうございます。
通常、この手の作品は、喪失&彷徨と再生がセットになっていますが、
本作は、喪失&彷徨にフォーカスしていました。そうなると、暗いだけの救いのない作品になりがちですが、緻密な脚本と俳優陣の演技力で、ダークサイドに引っ張り込まれずに、喪失&彷徨を描き切っていたのは見事というほかありません。
小さいおうちレビューの件は、書き手である私の空白行と文脈の関係性の配慮不足です。
誰が読んでも理解できるのがレビューのあるべき姿ですので。
では、また共感惡で。
-以上-
琥珀糖さん
みかずきです
冬薔薇レビューへの共感ありがとうございます。
該当レビューがなかったので、こちらのレビューに失礼します。
冬薔薇は、何もかも中途半端な作品との評価もありましたが、
主役を演じた再生途上の伊藤健太郎の有りのままの心境を映像化した感がありました。あえて、曖昧にケジメもなくダラダラとしたところがリアルに感じられました。伊藤健太郎は好きな俳優なので、完全に再生して、スクリーンで活躍してくれることを願っています。
マンチェスター・バイザシーは、喪失と再生がテーマですが、再生部分は光明が差した程度で、喪失部分が殆どでした。周りに支えながらも主人公は喪失感を抱いたまま人生を彷徨い続けます。喪失から再生へのプロセスが如何に厳しく過酷で長いものであることが得心できる作品です。
では、また共感作で。
-以上-
度々・・。
私、今作品が非常に好きでして・・。
荒涼たる風景の中、一人の男がとてつもない過ちを犯した哀しみを抱えつつ、生きている・・。
けれど、周囲の人はそれを知っていて、静かに彼を見守っている。
ケネス・ロナーガンの脚本が冴えわたり、ケイシー・アフレックのオスカー受賞も納得の作品でした。
マット・デイモンが当初この役を演じる予定だったのが、彼はチャン・イーモウの「グレート・ウォール」に出演するために、盟友ベン・アフレックの弟、ケイシーに役を譲ったのですが、何度観てもケイシー・アフレックに合った枠だと思いましたね。では。
明日も仕事なので、この辺で。では。