「乗り越えられない」マンチェスター・バイ・ザ・シー asicaさんの映画レビュー(感想・評価)
乗り越えられない
男兄弟っていいなあと、ラストはただそれを思った。
ふと沸き起こるフラストレーションを
暴力で昇華させようとしてしまう、そうするしか生きていけない。
乗り越えられないし、乗り越えたくもない、むしろ乗り越えるべきと思っていない自分の過去。
甥っ子との言葉の応酬は
字幕を読む暇もない。
心も 修復不可能なほど 再起不能なほど
傷つくのだ。
精神を病むという事が逃げに見えるほど真摯に自分を責める生き方は選んでそうしているわけでもなく、
その原因となった彼の元の性格、、友人がいっぱいいる男気のある男とセットになっているのだと思う。
自分の人生の言い訳は するつもりもなく 思いつきもしない。
ダメなものはダメで 嘘や言葉でカバーしたりしない男。
甘い言葉は撒き散らさず、
理性など 持っている分量だけでよいと思っている。
愛を行動で示そうとアクセサリーや花を買う男にしか価値を見出せないと思われている女たちだって、
こういう男に一発でKOされてしまうのだよ、と逆に男たちに教えてあげたい。
元妻(ブルーバレンタインの人だったね)が彼に向かって泣きながら謝罪するけれど、
法的罪にも問われず妻からも責められなかったら、その方がもっとつらい。
とは言え、彼女の言葉がずっと彼の脳裏でリフレインし続けているのもまた間違いない。
そしてそれは彼自身が受ける真っ当な責め だと思っている。
今はまだ16で、ヤル事しか考えてなさそうに見える男の子もきっと 父のように 叔父のように 海の男になっていくのだと思われる。
口先と脳みそが繋がっている男より
ハートと脳みそが繋がっている男がいい。
(と思いつつもほんとは両方にちゃんと繋がってないと、生活してる中で不具合が多くなって面倒であるというのも事実だったりする)
今晩は
共感有難うございます。
今作は、哀しすぎる過去を背負った男を演じたケイシー・アフレックの前半の自分の存在を消したかのような佇まいと、徐々に明かされる彼が犯してしまった過ちのシーン及び、彼を支えようとする兄を演じたチャンドラーや別れた妻を演じたミシェル・ウイリアムスや、彼を支える甥を演じたルーカス・ヘッジズの姿に、客電が灯った後も暫し、席を立てなかった程の個人的には、忘れ難き作品です。
映画館の魔法に捕らわれた作品でもありました。
すいません、個人的に物凄く好きな作品なので。