「人生ベスト決定」マンチェスター・バイ・ザ・シー レノックスさんの映画レビュー(感想・評価)
人生ベスト決定
もう3回も見てしまった。1回目は複雑な構成だったということもあり何か素晴らしいものをみたという感覚だけ残った。そして、何度も思い返したくなる映画だった。そして、多くの方のレビューなどを読んでもう一度見たくなり2回目を見に行った。2回目は構成やテーマを理解していたということもあり一番泣けた。3回目見たときにやっと細かい構成や脚本の上手さを理解できたほどだった。
気づいた上手い点としては冒頭のリーが兄の遺言を聞き後見人と告げられるシーン。このシーンは過去と現在のシーンが行き来する複雑なシーンなのだが、待合室にいるパトリックに事務のおばさんが「ジュースでもいる?」と声をかける。このセリフにより、まだパトリックは保護者が必要なこどもであると観客に無意識に伝えている。このような上手い点が他にもいくつもあるのだろう。
この映画は些細な些細な心の変化を丁寧に描いている。リーが終盤で告げる「乗り越えられない」というセリフはなんとも素晴らしいシーンであり毎回泣いてしまう。セリフ単体を見ればバットエンドのような悲しいセリフなのだが、乗り越えられないと誰かに吐き出すことが彼の小さな小さな一歩を見ているようで感動してしまう。
そして最後の釣りのシーンでは号泣でスクリーンが見えないほどだった。冒頭のシーンのような関係性に戻ったというより、子供と大人の関係で1本の釣竿でやっていたものが、それぞれ悲しみを抱え成長した人としてそれぞれの人生を歩むようにそれぞれ釣り竿を持ち、尊重しあっている関係に変化しているのがなんとも感動した。書かきれないくらい好きなシーンがあるのだが、最初から最後まで完璧な作品ではないかと思う。
最後にこの映画はポスターに惹かれた。「その心ごと、生きていく」というキャッチコピーはまさにこの映画を表現していると言える。しかし、言いたいことがあるとすれば、ポスターにはリーとランディが描かれているが、確かにこの二人の関係性は重要だが冒頭と最後のシーンからも分かる通りリーとパトリックの映画なのだからこの二人をポスターに使ったほうが良かったのではないかと少し思う。
お台場のアクアシティの映画館だと無駄に大きなスクリーンで見れるのでいいですよ。いつまでかはわかりませんが。