「船出」マンチェスター・バイ・ザ・シー たろっぺさんの映画レビュー(感想・評価)
船出
誠実と共助を描いた作品。
心を映す画。
人生を表す音楽。
受け手に委ねる役者の間。
どれも一級品だった。
犯した罪に対する罰が与えられないどころか、慰めや優しさを持って迎えられてしまい、どうしようもなく壊れてしまうリーの痛ましさ。
振り返ると、奔放な生活ながらも娘達からは慕われ、夫婦仲も特別悪い訳ではない。
ただどこかにボタンの掛け違えがあった。
エンジンを新調し、心機一転再出発かと思いきや、逃れられない過去が訪れる。
ここで初めて互いが真心を持って向き合う。
この最も美しい瞬間が別れの時とは、なんと切ない物語だろうか。
結局のところ、リーは子を失った父親という十字架から逃れられなかった。
だが変わらずとも変われずとも、あらぬ方向へ跳んだボールは、ただ拾いに行けばいい。
彼は立派に父を失った子の港となった。
ひとえにそれは、ジョーの粋な計らいによるものである。
彼は愛する者達に、死者として出来ることの全てを遺書に込めて贈った。
リーとランディ、パトリックとエリーズ、そしてリーとパトリックがそれぞれ向き合い支え合う事。
冷凍保存されたマンチェスター・バイ・ザ・シーに降り積もる雪を掻き、地に足を付け、強く清く真っ直ぐに生きる様、願い導いたのだ。
行くあてもなく、二人はのんびりと釣りに興じる。
そんな彼等の前途洋々たる船出を賛美歌が包む。
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