劇場公開日 2017年5月13日

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「見事な構成、ケイシーの繊細な演技」マンチェスター・バイ・ザ・シー AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0見事な構成、ケイシーの繊細な演技

2017年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

リーが現在体験することと、過去に経験したこと=記憶を交互に描く構成が、驚くほど緻密であると同時に有機的だ。兄の訃報を受け帰郷するリー。提示される過去は、幸福な時期も確かにあったことをうかがわせる。一体どんな転機を経て、感情を殺し他人を拒絶して生きる現在に至ったのか。徐々に明かされる過程がスリリングであり、切なさを否応なくかき立てる。

この映画が改めて認識させるのは、「自我」が記憶の集積にほかならないこと。リーの人生をたどり疑似体験する行為は、観客自身の人生をアップデートするほどの力を秘めている。

結果論ではあるが、リー役がマット・デイモンからケイシー・アフレックに代わったのも成功要因だろう。デイモンの顔立ちや表情は善人、陽気、楽天的、武骨なキャラには向くが、リーの罪悪感、喪失、悔恨、諦念といった複雑な感情は、ケイシーの繊細な演技とニュートラルに整ったルックスでこそ効果的に表現できた。

高森 郁哉