「改めて見ると凄く良い…んだが… ※ネタバレはまとめて最下部」ワイルド・スピード ICE BREAK alalaさんの映画レビュー(感想・評価)
改めて見ると凄く良い…んだが… ※ネタバレはまとめて最下部
人気作ももう8作目とあって、安定した面白さ…と言いたいところですが、実は自分、6作目から見始めた新参でして、初期の頃の作風をまったく知りません。なので6~8まで見た感想しか書けませんが、それでもシリーズ通して最も伝えたいこと=ファミリーとの絆は毎度ストーリーのベースとして丁寧に描き、アクションも手を抜かず、ド派手にやってくれるなあという印象。
もちろんCGのシーンも沢山ありますが、CGばかりに頼りきりでなく、ここぞというシーンではちゃんと迫力があるので映像はいつも通り好印象。
俳優陣も、カーアクションメインの作品ながら、車をブンブン乗り回すしか能のない連中…と思われないようにか、ほとんど全員男女ともしっかりとした身体つきで、拳でも銃でも戦える(という説得力が見た目にもある)人達を起用しており、力が入っているなと一目でわかります。
ハッカー等、戦闘メインじゃないキャラクターはちょっと細身だったり、なかなか人選も凝っているようです。
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以下
ネタバレ
あり
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自分はちょうど主人公ドミニクと今作で仲間になるデッカードとの因縁がギリギリ理解できる6作目"EURO MISSION"から見始めたのですが、それでも6作目で死んだジゼルとハンのことを考えると、デッカードとの和解はあっさりし過ぎていて、もう「デッカードが何か悪いことしたっけ??」みたいな扱いになってることに驚きました。
ドミニク、もうジゼルやハンのことはどーでもいいのか?
めちゃくちゃ斜に構えた見方をすれば、ジゼル役(『ワンダーウーマン』で有名になる前のガル・ガドット)やハン役の俳優は、デッカード役(ジェイソン・ステイサム)より知名度で劣るので、ジェイソン・ステイサムがメインキャストになってくれたらもう用無し、とでも言われたかのよう。
何でそこまで嫌味な見方をしてしまうかというと、ドミニクの元恋人エレナも、今作であっさりオサラバだったから。
まるで、本命のレティがドミニクの元に戻ってきたからエレナは邪魔、だからこの辺で殺しておこう、とでもいうように、あっけなく殺されて終わり。
「デッドプールとコーグの『フリー・ガイ』リアクション動画」でデッドプールが『フリー・ガイ』のヒロインに対し、「冷蔵庫の女(=主人公を成長させるためにあっけなく殺されたり犠牲になったりする女)にはなるなよ」と皮肉を言うシーンがあるのですが、今作のエレナはまさに「冷蔵庫の女」そのもの。
この「冷蔵庫の女」、昔から小説にありがちなパターンとして、大昔に学校で紹介されたことを思い出しました。
主人公の男性キャラが成長するために利用し終えた女性キャラ(大抵同年代の賢い妻や恋人)は、用済みになると作中で感動的に「殺され」、主人公は妻や恋人が死んでくれた「おかげで」もっと若く自分より能力の低い美女と結ばれる口実を得て、妻や恋人から得た能力で尊敬され幸せに暮らしていく、というパターン。
聴いた時は衝撃でしたが、実際に小説や映画を見ていると、この展開の多いこと。
特に登場人物が多くなりがちな映画では、女性キャラに限らず用済みのキャラクターはどんどん感動的に「殺され」ます。
物凄く嫌な言い方をすると、映画的に使い勝手の良いキャラクターは過去を綺麗さっぱりなかったことにされ、急に愛嬌のある善人に様変わりし、主人公の仲間として快く迎え入れられ、使い勝手の悪いキャラクターは特に理由もなく殺して終わり。必要ないから。
これは流石にないんじゃないか…と6から見始めた新参者ですら思ってしまいました。
上に「ファミリーとの絆はしっかり描いている」と書きましたが、それは現在生きてる仲間だけ。6作目、7作目と比べ、全体的に人の生き死にに対しての扱いは軽い感じがしました。
映像としては非常に迫力があり、とくに序盤のキューバの活気あふれる人々や、華やかな色使いも素晴らしく、今作も好きではあるのですが、前作・前々作と思い返してみても、周囲が主人公の都合良く動いてくれるのは創作だからある程度は仕方ないとしても、命の扱いに関しては、こんなに軽んじてたっけ?と引っ掛かってなりません。
おかげで、どの場面もいまいちスカッとしませんでした。
前作の撮影途中でブライアン役のポール・ウォーカーが亡くなり、ブライアンというキャラクターは(元々6作目で引退を示唆してはいたものの)今後強制的に使えなくなってしまいました。が、前作SKY MISSIONでブライアンの扱いは勇退といった感じで、今作のキャラクター達のように軽んじられているようには見えませんでした。
キャラクターがストーリー内で死ぬのと、演じていた俳優自体が死んでしまうのとでは全然違うとはいえ、そのキャラクターがシリーズ内で二度と出てこないことに変わりはありません。だから余計に気になってしまいます。
ちなみに6作目、7作目、8作目(今作)と、脚本家は全て同じ人です。であれば、ドミニクがデッカードと笑顔で握手……の前に、ちょっとでもジゼルやハンの名前を出してくれても良かったのでは?息子を助けてもらったからファミリーを殺された件はチャラ?そんなわけはない。
ジゼルは百歩譲って戦いの中での事故と諦めがついても、ハンは違う。「デッカードが殺した」とドミニクは認識していたはず。なのに、それを完全に水に流したように笑顔で握手。違和感あります、流石に。
あと、こんだけ長々語っといて何ですが、それ以前にメインストーリーが全然記憶に残りません。笑
公開当初にも一度見ているはずなんですが、本日地上波で見てみたら、全くと言って良いほど記憶がありませんでした。
唯一、序盤のキューバでのカーアクションと、最後のジェイソン・ステイサムと赤ん坊のツーショットが似合わな過ぎて記憶に残っていましたが、それだけです。
シャーリーズ・セロンに至っては、あんなキャラクターがいたことすら微塵も覚えておらず。今回見て初めてシャーリーズ・セロンが出ていたことに気付きました。(自分の記憶障害が)酷すぎる。
完全に冷徹な犯罪者になりきっていて、あれでは到底終わらなそうな雰囲気もなかなか良かったし、別に(↑に挙げた以外では)何が悪いというわけでもないんだけど、見終わってみると雰囲気を楽しんでただけかも…という何とも虚しい気持ちになってしまいました。
もう一度見れば…と期待しましたが、やはり見終わってすぐ、「何だったんだっけ?」という気持ちになりました。
自分がアホなのを差し引いても、ストーリーの造りは6、7作目より微妙だったのかなと思っています。
決して悪い出来というわけではないので、カーアクション好きな方にはお勧めします。カーアクション映画の中では間違いなく随一のシリーズです。