「じんわりと心をえぐられる」真白の恋 けざ+αさんの映画レビュー(感想・評価)
じんわりと心をえぐられる
知的障害者と説明はしているが、単に正直で大らかな動きをする人にしか見えない。ちょっと変わってるな程度にしか見えないのに、家族は守ろうとして自由を奪ってしまう。自分の思うように生きる事を許されない真白の叫びには心をえぐられた。終盤には知的障害なんて髪の毛の有無程度の差なんだというメッセージがあって、障害があるからといって縛る理由になるのかと考えさせられる。真白には本当に幸せになって欲しい。
ネタバレ気味にいくとユイ君のカメラは内蔵フラッシュ無しでマニュアルレンズを装着したストイックな組み合わせで、真白のカメラは広角ズームレンズが付いてるっぽいので父親が風景を撮ろうとして買ってた感じに思いました。雪の中でも真白はカメラを首からブラ下げたままなのにユイ君はバッグにかかる雪まで払ったりする対比なんかも面白い。写真館の同じ写真を素晴らしいと感じるセンスも同じだし、そもそも誤ってシャッターを押した事が始まりだから写真が重要なテーマになってるんですね。風景の素晴らしさやファッション、音楽に歌と全てが本気で作られた素晴らしい作品です。本気でパンフ欲しいです。
6/11に2回目を見ると、1度目では分からなかった事がいくつか見えてきました。冒頭にある川のシーンでは機材の特性なのか細かい部分にカラフルな偽色が発生していますが、何の変哲もない風景も見方によって変わるというメッセージに思えます。作中の画質は割とバラツキがあり、予算の都合と思ってましたが終盤に2人が兄と警官に発見されるシーンではあえての低画質を使っているあたり確信的です。中盤で兄嫁が白い帽子を渡したのは名前が真白だからかなと思ってましたが、神前式の角隠しにかけた願掛けのように思えました。そして肝心の結末は含みを持たせているように思えて実は主題歌で語っている事がわかりました。この歌はこの映画でしか使えない専用の歌で、セリフよりも強烈に胸を締め付けてきます。ラストシーンでは赤い帽子に戻っていて、白い帽子と共に思い出をしまい込んだように思えます。でも、周りが阻害しなければ「普通」になれる。力強い顔に明るい未来を感じた。