劇場公開日 2017年11月3日

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「アニメファン向きではない」氷菓 ジュウザノスケさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0アニメファン向きではない

2018年4月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

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古典部シリーズのファンとしての視点です。
本作が低評価である理由の一つとして「アニメ」という大きな壁があるということを感じています。
アニメ「氷菓」は京都アニメーションの高い画力と構成、演出が合わさり、非常に高い評価を得ています。
その結果、アニメから古典部シリーズに入ったファン、あるいはアニメで主要人物のイメージが定まったアニメ以前からのファンがいると思います。
その結果、本作のビジュアルから低評価を受けてしまっているのだと思います。
ですが、本作は米澤穂信の「氷菓」実写映画であって、アニメ「氷菓」の実写版ではないのです。
偉大なアニメという壁ができてしまって映画そのものをまっすぐ見ることが難しいのかもしれません。
一方で映画のほうが(意図的なのか、そうでないのか)アニメに寄せているような部分もあります。
これが少々いただけない。
最初からアニメを一切考慮せずに実写版として振り切っていればここまでの低評価にはならなかったと思います。しかし中途半端にアニメへ寄せてしまったためアニメファンの不評を買ってしまったのだと思われます。
それに関連してキャスティングについても一部不評が見られます。個人的には正直「ないな」と思えるキャスティングが散見されました。
主要登場人物が高校生であり、「ジョジョ」のようなバトルものでも、「ψ難」のようなギャグものでもない本作において、追及されるべきは高校生らしさであったかと思います。
メインキャストの方々はすでに成熟された大人の方々であり、「高校一年生」を演じるには不適当であったように思います。
若手を使うのはスポンサー等々の影響で難しいのかもしれませんが、どうせやるなら現役高校生とはいかなくても十代のキャストを使ってほしかったです。
シナリオ面に関して言えば、全体的には映画という枠組みの中に組み込むため、うまくまとめられていたと思います。しかしながら、一部の改変や省略は物語の印象を大きく変えてしまうかもしれないという部分もありました。
演出面は素晴らしかったと思います。
実写ならではの推理シーン演出、場面転換時に挟まる手書き文字などは演出としてよかったように思います。
ただ、ここもまたアニメファンの不評を買ってしまう「中途半端な寄せ」が見えてしまうという部分もありました。
全体的な感想を言いますと「アニメ」というフィルターをかけなければそれなりの作品であると思います。
しかし一度アニメ化されてしまった作品をフィルターなしで見ることが難しいのもまた事実。
アニメと実写の壁を避けきれなかった作品側にも問題があると言えるでしょう。

ジュウザノスケ