「何これめちゃくちゃ面白い。」帝一の國 ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
何これめちゃくちゃ面白い。
原作は1巻まで既読。
ラストの帝一の「君たちのことだよ」が観たくなって2回目観たらやっぱりかなり面白かったので、面白さのありかを書いておきたい。
旬なイケメン俳優をたくさん出した女性向け映画かと思いきや、役者の魅力もさることながら作品としてめちゃくちゃ完成度が高い…!でも登場人物はたいがい全力で真面目に狂ってる美しい男たち。素晴らしい。
まず役者陣がやっぱり魅力的。
全編通して帝一を演じる菅田将暉くんの全力っぷりと動きのキレがすごい。
父役の吉田鋼太郎さんとのかけ合いは、二人とも全力すぎて過剰な演技のシュールさが笑えてくるので必見。
帝一のライバル、菊馬を演じる野村周平くんもご本人は格好良いはずなのに、ひたすらクズっぷりと小者感と憎たらしさが出ていて良かった。でもどこか憎みきれない愛嬌もあるのがすごい。
本作は帝一や菊馬をはじめ登場人物がぶれないのが良いんだよな。
帝一はまっすぐだけどあくまで野心的で「イイヤツ」ではないし、菊馬も「(帝一に対し)最後にデレたよ!」と思ったら「安定のクズ」だったし。
あと大鷹弾の竹内涼真くんも器の大きく気持ちの良いやつっぷりがとても好印象だった。
光明くんの志尊淳くんも可愛くて素敵だったし、氷室ローランドの間宮祥太郎くんも基本尊大なキャラクターながら憎みきれない愛嬌があった。
森園さんの千葉雄大くんも静かな佇まいが素敵だったし。
あと永野芽郁ちゃん演じる美美子ちゃん。ヒロインながら気持ちがよくて格好良くて可愛くてすごく良かったなあ。
それなのにラストの扱いがひどいのもちょっと面白かった。
「あ、ヒロイン枠は光明くんなのね」と。笑
登場人物がみんな脇役に至るまで丁寧に描かれてるのもすごく良かった。
印象的だったのがたとえば氷室ローランドを支える友人、コマ。森園さんが生徒会長と決まった時に少し心配そうに氷室のほうを見るんだよね。
自分は森園に投票したことでの複雑な思いと友人として氷室を心配しているのがこの1カットで伝わってくる。
あと会長選挙に敗れて自殺騒ぎも起こした氷室ローランドが、帝一たちの生徒会長選挙の時に後副会長になって(髪を切ってる!)生徒会役員席でちゃんと活動してるのも「良かった」って思えるカットになっているし、あと森園さんを静かに支える副ルーム長、台詞もなく名前も出てこなかった気がするけど、要所で森園さんを見守ってるカットがあって、こんなとこまで描くんだなと感動した。
ストーリーの構成も素晴らしい。
終盤の帝一たちの代の生徒会長選挙の結末には「そうきたか」となって、その後「実はあの時こんな駆け引きが」と判明するのも面白いし、やっぱり帝一が「マリオネット」を弾いて「君たちのことだよ」とニヤリとするラストは痺れるよね。あそこで終わるのが最高。
コミカルさを演出するのではなく、登場人物の真剣な全力さを笑いに変えるというかなり高度なコメディとしても、役者の魅力を楽しむにも、野心に燃える男たちのドラマとしても楽しめるすごい作品。
いやあ面白かった。