わたしは、ダニエル・ブレイクのレビュー・感想・評価
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●悲劇のその先を考える。
ケン・ローチ初見。泣かせる感動映画だと思ってたら、とんだ社会派で驚いた。その結末にも。
公務員すべてがクソなわけではなく、競争がなくて決定権があると、人は易きに流れるモノだ。最近話題のJASRACみたいに。まあ、自分があんな仕打ち受けたら、間違いなく ちゃぶ台ひっくり返すけど。
それでも世の中、親切な人たちがいるってことに救われる。ダニエル・ブレイクにも、隣人のチャイナにも、職探しに協力してくれる人たちにも。そして公務員のおばちゃんにも。
にしても、ケイティのフードバンクのシーンは刺さったわ。グサリと。強烈に。
イギリスの社会保障事情がこれほどとは。誇張もあるのかもだけど。
寝室税って、真面目な人ほどホームレスって、やっぱりメチャクチャだ。
EU離脱に票が集まるのもなんとなく理解できる。トランプ当選だって発露は同じだ。
格差社会、資本主義の限界、政治の混乱。
隣人チャイナのビジネスモデルは乱暴だけど、ある意味、こうした世界の混迷を抜け出す突破口なのだと思う。もちろん倫理的にはNGだけれど。
貴族と民衆、領主と小作、大企業と下請け、国家と地方。上意下達のクラサバ系システムから、個人と個人がつながるweb系への民族大移動。個々人でつながる信用取引。自分が困ってるのに助け合うダニエルとケイティがつながったように。
世の中、ハラ立つことは多いけれど、人の善意が世界を変えると信じたい。
伝えたい事
テーマが自分自身の隣に潜んでいるテーマで深く考えさせられた。貧困女子を多く知っているし次は私かもしれないという立ち位置にいると見てて辛いが向き合わなければいけない問題。引退を撤回してでも作ってくれた事に感謝。
少しありきたりな内容
25年以上前に英国に4年ほど住んでいました。その後25年ほどは日本を拠点として、英国を含めた欧州で仕事をしてきました。当時は学生から社会人、中間層、貧困層や難民の人々まで友人として交流がありました。財政の問題から公共サービス、特に貧しい人々への公共サービスが削られていったのも目にしましたし、職種や階層による驚くほどの収入格差の一端も見てきました。この映画での情報弱者やパソコン弱者に対る対応は、現実より少し誇張されすぎているような気がしました。「Still Life(お見送りの作法)」や「フルモンティ」「Brassed off(ブラス)」の方が、英国の本当の貧困層の人々、庶民の生活の一端をよく表現している気がします。
見るべき映画
思っていたより重かった。
主人公の境遇だけでなく、
むしろ人間の偉大さが感じられる。
社会的であって資本主義国家はその国民の投資を頼りにして成り立っている集団である。
一方で、税金を絞っている一方で、労働者・下層階級の人に対する福祉などを減ろうとしている。
理屈を言おうとするが全く屁理屈な権力者がいる。
私たちの見えないところに常に生活に困る人がいる。
世界中の公務員たちに見て欲しい映画でもある。
ただその暗いトンネルに、不公平な目に遭う人たちは、光を探すのを諦めない。
また彼らは自分の光を見失うこともない。
そんな人たちに、私たちは見習うべし。
そんな人たちに、私たちは尊敬すべし。
「真実」を実写する素晴らしい映画!
天使の分け前の評ですが・・・
「マーガレット・サッチャーは、現代において、もっとも<分断>と<破壊>を引き起こした首相でした。
大規模な失業、工場群の閉鎖、破壊された地 域社会などが、彼女の残した遺産です。
彼女は闘士でしたが、その敵はイギリスの労働者階級でした。
彼女は、政治的に腐敗した労働党の指導者たちや、多くの 労働組合の幹部たちに助けられて、勝利を得ました。
今日、私たちが置かれている悲惨な状態は、彼女が始めた政策によるものです。
私たちは、どのように彼女を弔うべきなのでしょうか?彼女の葬儀を民営化しましょう。
競争入札にかけて、最安値を提示した業者に落札させるのです。
きっと彼女も、それを望んでいたことでしょう。」
ケン・ローチ監督のサッチャー元首相への言葉
いかにも労働党より更に左派の社会活動家、ケン・ローチらしいコメントである。
そんな活動家の作品に込めたメッセージ、いつもながらのmy解釈はこちら
→
この<分断>や<破壊>を取り戻す為に、ちょっとした配慮、気遣いをみんなで思い起こそうぜ!
それを天使の分け前→Angels' Shareというタイトルにするよ!ストーリーは本物のウイスキーの熟成の成り立ちをベースに、人として熟成したものを周りの仲間へシェアする。主人公から息子、嫁さん、どうしようもない仲間へ、そして主人公へは周りの大人が温かい気持ちをシェアするそんな素敵な作品。
こんな映画をシェアし続けてくれるケン・ローチに感謝!
そして、この監督の作品を毎回シェアしてくれる配給会社に分け前を!
そしてそして、銀座テアトルシネマのみなさん、本当にたくさんの映画をShareしてくれて本当にありがとう&お疲れ様でした!
みなさんにAngels' Shareがあらんことを願って!
ちゃんと働いてきた。税金を納めてきた。愛する家族と最後の日まで暮ら...
ちゃんと働いてきた。税金を納めてきた。愛する家族と最後の日まで暮らしてきた。そんな人が働けなくなった時のために社会保障はあるべきだ。それは施しなんかじゃない。
役所が杓子定規なのは日本もイギリスも同じなのだな。いや、罰則があるところは日本よりも厳しそうだ。
罰則や規定に融通が利かないようにしてあるのはみんながみんなダニエルのような善良な人ばかりではないせいでもある。社会保障費は税金だ無尽蔵ではないし、誰にでも均等に配分してしまったら、本当に必要な人には行き渡らない。
人権を盾に真っ当に生きてきた人達が頑張って築いた社会保障にタダ乗りしてくる人がたくさんいるということも事実なのだ。
映画としてはパルムドール受賞とはいえちょいマトモがすぎるんじゃないかな。
パルムドール受賞も納得
高校生の頃、民主主義の実体について議論したことがあった。ひねくれていた私は、民主主義でも専制政治でも何でも、政治は圧力関係と裏取引だと主張した。アドバイザーで参加していた教師は、そういう見方をしていたら永久に政治はよくならないことになる、そうではなくて、民主主義政治とは手続きなんだと言った。行政でも立法でも司法でも、民主主義は国民主権という基本の考え方によって、国民が不利を受けないように手続きを規定している、それが憲法なんだという説明だった。教師に相応しい理想主義的な考え方で、年齢を経ても前向きな考え方が出来るその教師に感心したことを覚えている。
しかし現実は、高校生の私が主張し、いみじくも教師が指摘したように、政治は圧力関係と裏取引に終始していて、世界全体を見渡しても、永久に政治はよくならないように見える。政治家は常に新しい法規(法律、条令、規則、施行令など)を作るが、必ずしもすべての法規が憲法の精神に則っているとは限らない。しかも現代の政治家はほぼ御神輿で、法規の詳細を作成するのは役人だ。憲法に反しても役人の利益を優先する法規を作るようになるのは必然である。
第二次大戦後のイギリスでは、有名な「ゆりかごから墓場まで」という福祉政策を実施し、その後深刻な財政難に陥った。サッチャーが登場して福祉を大幅に削減したが、医療関係者の大量流出を招いただけだった。現在に至るも、いまだにその状況から抜け出していない。イギリス国民は日本よりももっと病苦と貧困の苦痛に喘いでいるのだ。
本作品はそういう状況下で生きる庶民の現実を具体的に描いている。福祉予算を切り詰めるために、給付の手続きを複雑にし、縦割りにした結果、主人公ダニエル・ブレイクは二つの給付手続きの狭間に陥って、万事窮してしまう。日本でいえば、身体を壊して仕事が出来なくなった人が、傷病手当の給付を受けようとして認められず、では失業給付を受けようとしても求職活動が不十分として認められない状況だ。
不成文憲法の国イギリスでは、国家の舵取りに関わる重要法案以外は違憲立法の審査はない。福祉の実施に関わる細則は、役人のやりたい放題となる。
福祉予算がないから給付のハードルを高くして給付が受けられないようにしている割に、福祉の役所は役人で溢れ、必要とは思われない警備員まで常駐させている。予算の原資は税金であり、もともと国民から役人が預かっているだけなのだが、どの国の役人も、税金を預かり金と思わず、自分たちの金だと勘違いしている。
日本でも、小田原市の役人が「生活保護なめんな」とプリントされたジャンパーで保護申請者を10年間に亘って威圧していた事態が今年になって発覚したばかりだ。当然氷山の一角であり、全国で同じようなことが行なわれているのは火を見るよりも明らかである。役人はもともと国民の税金を預かっているだけなのに、それを給付してやるという尊大な態度を崩さない。給付を受ける側は、人間としての尊厳を蹂躙され、自信を失い、やがて生きる希望も失う。そんなことをしている役人には、きちんと給料が支払われる。同じ国民の税金からだ。税金で雇われた警備員が福祉事務所から無辜のダニエル・ブレイクを追い出す。大声を上げる体力もなければネットで訴えるスキルもなく、反対運動を始めるカネもコネもない。主人公は無力感に打ちひしがれる。
しかし大抵の役人は、悪意ではなく法規に忠実であろうとして四角四面になり、結果として国民を苦しめているだけだ。そうならないようにするのが政治家で、政治家を選ぶのは有権者だ。巡り巡って国民を苦しめているのは国民自身であると考えれば、政治というものの救いようのなさに絶望感を覚える。
主人公ダニエル・ブレイクを演じた役者はこの映画で初めて見たが、静かな怒りの表現と、出逢った母子に対する思いやりの表情はなかなかのもので、この主人公がまったくの善人で、しかし屈しない意志の持主であることを十分に観客に伝えていた。母親役のヘイリー・スクワイアーズは、子供を産んで微妙に崩れた身体の線と母としての強さ、女としての弱さをきわどく演じていて好感が持てた。ディラン役の子役が非常に達者で、不遇の生活環境で精神の成長に歪みが生じた子供を繊細に表現していた。この子役の感性は大したもので、うまくいけば個性派の俳優になれるだろう。
感情移入し過ぎて役人が大嫌いになるのは言うに及ばず、憎悪や殺意さえ抱きかねない凄い映画である。カンヌでパルムドールを受賞したのも納得だ。こういう映画がちゃんと評価を得ているところに、まだ民主主義国としての救いがあるのかもしれない。
日本の歩む道
権力を振りかざす行政?
というよりか、どうにもできないのが行政。
日本も同じ道を辿ることは目に見えるだけにとても辛かった。
偉業を成し遂げたものでもない、たった一つの想いや心。
ちっぽけかも知れないけど、たった一人のやさしさ。
大切に、丁寧に関わって生きたいと想います。
幸せのシステム化は、可能か?
この自由な世界では、墜ちてゆくのも自由と云うことでしょうか。
ハンガリーの映画だったと思います。里親になると、補助金が出る福祉政策があったそうです。結果、バーゲン品のように、孤児が引き取られました。補助金貰った里親先の家畜小屋で、牛と暮らすことになった女の子の話が、未だに忘れられません。
困っている人を救うはずの決まり事が、人を苦しめるのは、何故でしょうね。逆に不正需給の温床になったり。しかも、その線引きをする仕事のストレスは、半端ないそうです。本作でも、決まり事と良心の狭間でもがく職員さん、いましたけど。
誰か一人が、間違ってるとかではなく、ひとつのシステムで、すべての人が幸せになると思うこと自体、幻想ですかね。その幻想と現実を、時に冷酷に、時にユーモラスに描かく監督さんのまなざし、大人ですねぇ。
なんにせよ、人としての尊厳と、人を思いやる強さと優しさは、持ち続けたいものです。みんな、ダニエル・ブレイクだよ。
伝わってくる映画!
ケン・ローチの作品を全部観ているわけではないけれど、でも少なくともここ5年はケン・ローチの作品が初期の頃に比べ、パワーを感じなくなっていた。観終わって不完全燃焼のような感があった。
この映画を観て「スッキリ」するわけではない。
でも、本作で訴えようとしているものが伝わってくる。
そして、「マイ・ネーム・イズ・ジョー」など、イギリスの労働者階級を描いたケン・ローチの他の作品を思い出し、また観たくなった。
一人でも多くの人に観てもらいたい映画だと思う。
多くの人が観て考えるべき
イギリスの福祉のひどい現状を、心臓病を患ったダニエルとシングルマザーのケイティという社会的弱者に追いやられた彼らの立場から、淡々と見せつける作品。
過度な演出や説明はない。にも関わらず、ぐいぐいとダニエル&ケイティの身上や境遇や怒りや悲しみに引き込まれてゆく。
ダニエルはけして甲斐性なしじゃないし、わからずやでもないし、実直に長年働いて税金も納めてきたし、困った隣人に手を差し伸べることのできる、ごく善良な普通の市民だということがひしひしと伝わるからだ。むしろ、金や生活がかかっていても卑怯な手段は選ぼうとしない彼の高潔さには感服する。
(私個人は、支援を受ける側に一定の条件が課されるべき、というその基本スタンス自体に疑問を呈したいけれど)
私はイギリス国民ではないから、本作の真偽は判断できないけれど、日本でも同じことが起こっている、起こりうる、という危機感が確実にある。
市民のための行政だというのに、目的を忘れた態度で働く公人たち。親切さやユニバーサルな目線が欠如したオペレーション。果てには思いやりの行為が非難の対象になるというありさま。。
私は公人ではないけれど、自身の職分において同じようなことをしでかしてしまっていないだろうか?
こんな状況を防ぐため、あるいはこんな状況下にある人々の手助けになるため、自分には何ができるのだろうか?と考えはじめている。
多くの人に観て欲しいと思った作品。
せつなくなる…
観た後はせつなくなって、怒りを覚える。
役所の仕事は強いものにはソンタクとか言って必要以上によくしてあげるのに、弱いものには規則で締め上げる。
イギリスでもこんななのか…
沢山の人に観てほしい映画だと思います
俺もダニエル・ブレイク
いわゆるお役所仕事は日本って結構優しいんだと痛感した。イギリスって、諦めさせるために、様々な制度をワザと複雑にしているとしか思えない。自分は年齢(50台半ば)よりはそこそこネットは詳しいと思っていたが、観た翌日に、2ヶ月後に行く飛行機のチケットをマイルで取ろうとPCに向かうも途中でつまづいてコールセンターにお願いした始末。
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