「【ケン・ローチ監督の慧眼は、官僚主義の愚かさをシニカルなユーモアを交えつつ激しく糾弾する。現代が抱える格差社会へケン・ローチ監督が怒りを叩きつけた作品でもある。】」わたしは、ダニエル・ブレイク NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【ケン・ローチ監督の慧眼は、官僚主義の愚かさをシニカルなユーモアを交えつつ激しく糾弾する。現代が抱える格差社会へケン・ローチ監督が怒りを叩きつけた作品でもある。】
ー 心臓発作のため、雇用支援手当で細々と生活するダニエルとシングルマザーのケイティが徐々に社会的弱者になっていく過程が観ていて辛い。
(冗談だろう?と思えてしまう、イギリス行政の仕組みや小役人たちの言動の数々に嫌悪感を覚える。)ー
・職業安定所の壁面に”I、Daniel Blake" と大きくスプレー缶で落書きし、警察に連行されるダニエルの姿は市井の弱者のささやかな抵抗であり、印象的なシーンであるが、根本的な解決には全くなっていない。
・イギリスの右傾化及びEU離脱の流れに歯止めがかからない背景は、セイフティーネットワークが破綻している事と、蔓延る官僚主義を露わに描くこの映画で良く分かった。
<現代日本でも、同様の状況が密やかに進行していないだろうか?と危惧せざるを得ない事に気付かされる作品。>
<2017年6月10日 劇場にて鑑賞>
■2021年12月23日 追記
- 忌まわしき過去-
・日本でも、”幸せロード”(高度経済成長時代に謳われた言葉:20代で結婚をし、子供を設け、自宅を購入し、数々の社会保護制度の元、貯蓄を蓄え、悠々とした老後を送る・・。)が、リーマンショック以降崩壊した事は、万民が知っている事である。
リーマンショック時に、人事に居た私は、物凄いプレッシャーと、当時の阿呆な担当役員の
”何で、こんなに期間従業員が居るんだ!”
という罵声を毎日浴びながら、雇い止め通告を期間従業員の方々に毎日夜遅くまで、製造課長たちと行っていた。(目の前で泣かれると、正直キツカッタ・・。)
更に正従業員の仕事も無くなり、可なりの方に関連会社に出向して頂いた。
気がおかしくなるかと思ったが、数名の先輩の言葉に助けられ、何とか乗り切った。
だが、当時雇い止めをした方々及び(採用も担当していたため)所謂、就職氷河期と言われる世代に当たってしまった方々に対しては、合わせる顔が無い。
言い訳に過ぎないが、それでも当時、私は
”会社の年齢構成を考えると、300名の技能職の採用は必要です!”と会議で必死に説明した。
だが、当時のお爺さん副社長たちは、”先が分からないから最少人数の採用にしよう・・”と他人事の様に言ったモノだ。私の上司も必死に粘ってくれたが、駄目だった・・。
で、現在その付けが来て、私は毎日生産要員確保に走り回っている。
先見の明を持たない保身的な者が、高い地位にあっては駄目だという事を痛感している。
政府も数年前から、就職氷河期に当たった方々への支援を始めているが、継続、発展してお願いしたい。
非正規労働者に頼って、利益を生み出す会社には、いつか必ず、付けが来る。
GAFA然り。日本の企業然り。
社会的弱者を生み出す社会に、未来はない。
”お前が言うな!”と言われる事は重々承知の上、私は日々、且つての過ちを修正すべく、日々を送っている。