「深く考えさせられる戦争映画」ハクソー・リッジ 悶さんの映画レビュー(感想・評価)
深く考えさせられる戦争映画
(2017年7月に劇場鑑賞した直後の感想です。ご参考までに)
世評の評判が良く、一見の価値ありと感じて、劇場に足を運んできました。
デズモンド・ドスという青年が、第二次大戦に志願兵として参戦するも、自らの信念から、武器を持たずに、負傷した兵士を救うということに力を注ぐという実話。
ここでは、彼を動かした「信仰」と、戦場となった「沖縄戦」に分けて感想を述べたいと思います。
【信仰について】
デズモンド・ドスの信仰するキリスト教には、「汝、殺すなかれ」という教えがあります。彼は、これに従い、戦場でも武器を持たない衛生兵として、負傷した兵士の救助に尽力します。
「人を殺してはいけない」というのは、別にキリスト教に限ったことではなく、全人類共通の道徳観だと思います。
それが、戦争という国が下した決断により、人を殺すことが当たり前になってしまう。
彼が、志願するまでの苦悩というのは、あまり描写されなかったけれども、人を殺すことが認められてしまった以上、せめて助かる命は救ってあげたい、という苦渋の選択だったのでしょう。
私は、こうした人間が現れ、武器を持たずに戦場に赴かせ、最後には勲章を与えて英雄とする、米国の懐の深さに感銘しました。
もちろん、日本人だって人を殺さないという信念は誰しも持っていると思います。
でも、それをこのような形で実現することが、日本人には国民性からか、なかなか難しいような気がします。
【沖縄戦について】
本作品では、宣伝の中でも、特別に沖縄戦が舞台だということは強調されていません。
だから、本作品が上映されていることは知っていても、沖縄戦のことを描いているということを知らない人は案外多いのではないでしょうか。
もっとも、本作品の主眼は、沖縄戦ではなく、上記の武器を持たずに戦場で兵士を救ったということなので、それでよいとは思います。
しかし、日本人である以上、沖縄戦ということに着目せずにはいられませんでした。
沖縄戦というと、民間人や年少者に多くの死傷者が出たことで、その悲劇性がしばしば取り上げられます。
今回は、期せずして、アメリカ目線で、沖縄戦を観ることになりましたが、日本だけでなく、アメリカにとってもいかに熾烈な戦いであったかが、臨場感溢れる戦闘シーンでよく分かりました。
本作品は、反戦映画ではないけれど、このような戦争のない平和な日常というものを、とても有り難く感じた次第です。