「メル・ギブソン最新作」ハクソー・リッジ ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
メル・ギブソン最新作
第二次世界大戦後期の沖縄、高田高知(ハクソーリッジ)を巡る日米の攻防を描いた実話。
この地に衛生兵として志願し、武器を持たず75人の日米負傷兵を救出したデズモンド・ドスの半生を描く。
物語は三部構成。
ドスの幼少期、志願兵としての訓練時代。
そして地獄のハクソーリッジが舞台となっていた。
見る前にはプライベートライアンのようないわゆる『戦争モノ』として覚悟して見に行ったのが、実際に見ての印象は『戦時下を舞台にした人間ドラマ』だった。
彼が如何にしてハクソーリッジでの奇跡を起こすまでに至ったかが丹念に描かれている。
戦場という地獄で身を呈して敵味方問わず命を救うドスの姿は、もはや人というよりは神に近い悟りの境地まで達していた。
そう行った意味ではメル・ギブソンが考えるキリスト観が投影された『宗教映画』としても見れるかもしれない。
では戦争モノとして見た場合どうだったかというと、上記の宗教要素を取り払ったとしても十分満足できる仕上がりだった。
極力実写にこだわった地獄の戦場には四肢を粉砕された死体がころがり、そこには蛆や鼠が群がる。
累々と横たわる死体の上を兵士が駆け回り、更に殺しあう。
この救いようのない絶望の戦場が日本だったと思うと寒気がした。
戦争における大局を描いた作品は数あれど、そこで生きた個人の主義主張にフォーカスを当てた作品は殆どないだろう。
ドスの父親を演じたヒューゴ・ウィーヴィングの演技も光っていた。
日本人が今見るべき、価値ある作品なのは間違いない。
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