「恐怖を凌駕する感動がある戦争映画」ハクソー・リッジ yookieさんの映画レビュー(感想・評価)
恐怖を凌駕する感動がある戦争映画
「マッドマックス」「リーサル・ウェポン」シリーズが大好きな”俳優”メル・ギブソン ファンの自分ですが、俳優以上にその腕を認められている”監督”作を観るのは恥ずかしながら初めてでした。10年振りに才能を発揮しアカデミー監督賞にもノミネート、そして太平洋戦争の沖縄戦が舞台の実話に基づく映画という事で、72年目の終戦記念日を迎えたこの8月に日本人としても意義ある鑑賞だと思いました。
沖縄・前田高地での激戦が、壮絶な接近戦のシーンが、目を覆いたくなるほどの生々しさで描かれています。想像を絶する戦闘シーンが、本当に怖くて恐ろしい戦争の実態が、スクリーン一杯に音と映像で繰り広げられます。物凄かったです。
だからこそ、宗教上の信念を貫きながら武器を持たずに、衛生兵として参戦した主人公デズモンドの行動は、勇敢という言葉では賞賛しきれません。人を殺すための戦場で人を救う事に専念し、72人もの負傷兵をたった1人で救った主人公の意思の強さが、いつしか観ている者に戦争に対する恐怖を凌駕した大きな感動を与えるのです。米兵だけでなく日本兵をも助けたという事実も描かれていて、そこもまた感動でした。
観客と同じように隊長や仲間達も、最初は武器を持たないと主張するデズモンドを馬鹿にしていたのに、いつしか彼を理解し、彼に助けられもして、尊重していくくだりにも胸を打たれます。戦争そして宗教について日本と米国の違いを改めて考えさせられました。
とは言え、ただ感動させるだけでなく、クスっと笑ってしまうような軍隊描写や瑞々しい恋愛描写もあり、重た〜いだけじゃない、とても良質な映画でした。メルギブやっぱ凄い!主演のアンドリュー・ガーフィールドさんは「沈黙」に引き続き『神よ!!!』と祈りながら受難する役が本当に似合いますね。
珍しくパンフレットを買ってしまいました。絶対に映画館で観るべき一本だと思います。お勧めです。