「キャラクター設定部分が弱いけどなかなか」亜人 Ellさんの映画レビュー(感想・評価)
キャラクター設定部分が弱いけどなかなか
悪役の方の「佐藤」の戦闘とVFXの「幽霊」の戦闘にワクワクする時間でした。けっこう楽しめましたし、邦画でよくありがちな変な間延び感というか、監督の自己満足みたいな部分が極力押さえられていてその点には好感が持てました。
ただ、逆に言うと、戦闘以外の物語がほとんど皆無であり、主人公の存在感もめちゃくちゃ薄い。
映画の尺に収めなくではいけないとは言え、主人公のキャラクターの設定付けが甘くて観客としてはあまり共感できない。もう少しキャラクターの肉付け部分の脚本を頑張ってほしかった(いくら主人公が亜人で冷淡とは言え・・・)。
物語の前提として、日本の政府・経済界トップによって拷問のような虐待を何年も受け続けてきた佐藤と田中というキャラの前では、彼らの歪んでいるとは言え、正当な復讐を阻む主人公側に正義が見えない。なぜ自らも同じ虐待を受けた亜人である主人公が「佐藤」たちと敵対するのか、なぜ政府側につくのか、そこの描写が薄く、ご都合主義で説得力がありませんでした。そういう意味でも幼馴染キャラを排除したらだめでしょ。妹をそのかわりにしたかったのかもしれないけど、そんな深い絆が二人の間に見えない(過去のエピソードの1つぐらいは入れないと…)。
役者さんは皆魅力的で、戦闘アクションもかっこよかった。
特に「佐藤」役の綾野剛は怪演とも言えるのかな。本人は若いのに、アニメの年長な佐藤さんがそこにいるような再現性の高さは脱帽。声もよかった。
ま、脚本に惜しいところがあったけど、アクション映画としては、演技、VFX、演出、概ね満足です。
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