「クリスマスに訪れる奇跡の物語」素晴らしきかな、人生 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
クリスマスに訪れる奇跡の物語
ニューヨークで広告代理店を経営しているハワード(ウィル・スミス)。
彼は2年前に6歳の愛娘をなくしてから、まるで腑抜け状態。
妻とも別れ、誰にも心を開かず、ドミノを並べては倒すだけの毎日。
会社の経営は不振になり、もう身売りしか道がない。
友人で共同経営者のホイット(エドワード・ノートン)は会社の身売りを決意するが、ハワードは彼と話そうともしない。
そこでホイットは、ハワードに経営能力なし、と取締役会で承認させるため、一計を案じた・・・
というところから始まる物語は、失意のハワードが「愛」「時間」「死」に宛てて書いた手紙を利用して、3人の俳優たちに「愛」「時間」「死」を演じさせ、あたかもハワードだけに3人が見えているように仕向ける。
ほほぉ、ディケンズの『クリスマス・キャロル』の変型ではありますまいか。
原本では、偏屈な爺さんスクルージの前に3人のゴーストが現れ、爺さんが改心するという設定だが、それをそのまま現代に移し替えても上手くいかないのは、過去の映画化作品『3人のゴースト』でもわかっている。
なので、今回は、愛娘をなくした父親という、感情移入しやすい設定にしたというわけ。
映画は、さらに工夫を凝らしており、3人の俳優にはそれぞれパートナーがいて、彼らは皆ハワードの友人であり、かつ、友人たちは俳優たちが演じる「愛」「時間」「死」の問題を抱えている。
具体的には、
愛=(俳優)キーラ・ナイトレイ=(友人)エドワード・ノートン、
時間=(俳優)ジェイコブ・ラティモア=(友人)ケイト・ウィンスレット、
死=(俳優)ヘレン・ミレン=(友人)マイケル・ペーニャ
という組み合わせ。
この友人たちも俳優たちとかかわることで自身の問題を解決していく。
ということで、再生の物語が二重三重に用意されている。
そして、それだけでなく、物語の中心であるウィル・スミスの再生の物語にも驚くべき真実があり、彼が娘の名前を口にするシーンは、図らずも落涙してしまった。
俳優陣は皆好調で、特にヘレン・ミレンとナオミ・ハリスが良い。
フランク・キャプラ監督の『素晴らしき哉、人生!』とはまるで異なるが、「クリスマスに訪れる奇跡の物語」という点では同じ。
なので、この日本版タイトルにしたのだろう。
原題は「COLLATERAL BEAUTY」。
付随的な美しさ、の意味だが、劇中では「幸せのオマケ」と訳されていました。