「違和感」エゴン・シーレ 死と乙女 orionさんの映画レビュー(感想・評価)
違和感
絵画に興味を持ち始めたきっかけがエゴン・シーレなので、上映を心待ちにしていた。
多くの作品は残しても夭折ゆえに彼の人間性まで掴めなかったのは仕方ないにしても、ヴァリーがシーレに泣きながら縋り付くシーンには驚き。芸術家にミューズ的存在は往々にしてあるし、伝記などでモデルに肩入れしたことはなかったが、実際のヴァリーは涙ひとつ見せず立ち去っている。「死と乙女」は実は、枢機卿=シーレがヴァリーにしがみ付いているのだという説もあるくらいなのだ。解釈の違いは致し方ないにしても、これはシーレ伝ではなく彼の名を借りた物語なのだと観ていたが、別れのシーンだけは書き換えて欲しくなかった。
それでも100年前の衣装や医療は興味深かったし、展覧会シーンや無造作に扱われる「家族」は、いまはその価値を知るだけに贅沢な気分を味わえる。
コメントする