「バーチャルに相対する」カレーライスを一から作る La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
バーチャルに相対する
これは僕も是非やってみたいプロジェクトです。
グレートジャーニーとして南米最南端からアフリカまでの5万キロを12年かけて歩き通し、最新監督作の『うんこと死体の復権』では自分のひり出したものがどうなるのかを追う人々を記録した関野吉晴さんが、武蔵野美大の学生さんらと共にカレーライスの材料全てを1年かけて一から自分で作り、調達して料理するまでを記録したドキュメンタリーです。
米は勿論、玉ねぎ・人参・ジャガイモの野菜、ニンニク・生姜・うこん・コリアンダーの香辛料などは田畑で作り、塩は海で採取した海水から製塩し、肉はダチョウ・烏骨鶏・ホロホロ鳥などを雛から育てるのです。恐らく関野さんは、「自分が人類の歴史の中のどこに立っているのか知りたい」と思ってグレートジャーニーの旅に出て、「私という人間の営みが生態系のどこに居るのか知りたい」と思ってウンコの人々を追い、逆に「口に入る物はどこから来るのかを知りたい」と思ってこのカレーライス・プロジェクトに取り組んだのだと思います。しかも、知識として知るのではなく、自分の手や足を動かす事で自分の中で消化したいとお考えなのでしょう。色々な活動をなさっている様でいて、全て揺るがぬ思いで貫かれています。
バーチャルな技術が高まれば高まるほどボンヤリした不安も高まり、とにかく自分で歩いて触って遣って味わって確かめたいという思いが強くなる僕の様な人間の飢餓を癒して下さる作品でした。
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