ネヴァー・エヴァーのレビュー・感想・評価
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いない、ということを感覚的に理解する
映画の中で時々聞かされる「バン」という音が、凄くこわい。これはホラー映画だったかな?とちょっと焦る。でも観終わってみれば、そういうものでもなかった。
愛しい人の死を乗り越える話と、ひとことで言ってしまえばシンプルだけれど、この映画はなかなか個性的に感じた。
愛する人を突然亡くしたとき、その人がいない、という感覚に、普通はすぐには馴染めない。むしろ、まだいるかのようにさえ感じる。ローラの場合はそれが尋常ではなかった。
彼女は彼と過ごした家にひとり籠もり、彼がまだいるかのような感覚に埋没していく。その埋没具合の凄さは、感覚的に鋭い芸術家肌の人ならではのものかと思う。
バンという音は、ドアや窓が風で締まる音のようにも思えるけれど、雑念を払い思い出の中に感覚的に埋没していく時のタイミングを象徴しているように思える。
その世界も現実との齟齬が少しずつ生じ、徐々に「彼はいない」ということが感覚的に理解されてくる。
確かにあるのは、自分のなかにある彼の思い出であり、向き合わなくてはいけないのは彼の幻想ではなく、自分自身だった。
これらを理屈ではなく、すべて感覚的に見せてくれるところがこの映画の凄いところ、面白いところだと思う。
主人公自身が芸術家のはしくれで、相手もまた有名な芸術家という設定だから、特殊な条件のもとにある人たちの話ということにはなるけれど、言わんとすることや、このような感覚は、死を免れないわたしたち誰にとっても、基本的には身近なものだと思う。
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