二度めの夏、二度と会えない君のレビュー・感想・評価
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近年の青春映画の中では良作
『武曲MUKOKU』という映画を観て村上虹郎という若手俳優に感じるところがあった。
この映画を観たのはまさに再度彼を観るためである。
原作小説を書いているのがライトノベル作家なためか題材としてはありきたりなタイムリープ青春ものである。
つい先日『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を観たばかりだが、日本の映画界はこの使い古されたタイムリープをさらに使い続けてボロボロにするつもりなのだろうか?
世界中どこも大ヒット作品が誕生するとその二番煎じ、三番煎じが次々と生まれていくものだが、邦画界において昨年の超ヒット作といえば『君の名は。』である。
よくよく考えてみると同作は男女入れ替わりの他にタイムリープの要素も含まれていた。
男女入れ替わりはさすがに安直すぎるのでタイムリープものを制作してヒットを狙う、真相はわからないが、アニメの世界でも異世界転生ものが流行っているので「時空を超える」というのは売れると勘違いされているのかもしれない。
設定はしょせん設定である。物語として独創的であったり、納得させられるものをいかに作れるかにかかっている。
また本作の高校生のバンド結成物語というのも王道である。
ヒロインが不治の病というのも王道である。
そもそも恋愛映画の鉄則は恋する男女に超えられない壁を設けることになるが、昔は身分の格差があった。
しかし現代ではほぼ消滅してしまったためかわが国の恋愛映画ではあまりにも不治の病や障害が多用されている。
むしろ映画に限らずアニメも漫画もほぼそれしかない!
本作は王道のオンパレードになるが、王道を重ねれば重ねるほど既視感が強くなるのはやむをえまい。
本作は主人公がヒロインに決して「好き」とは口にしないという縛りを設けたことで物語に説得力を持たせ、その縛りを元に各種エピソードを展開している。
「好き」と言えない主人公が以前とは違う行動を取ることで経験した過去が違う方向へずれていく。またそれを元に修正しようと主人公が行動する、この流れでお話は進んで行く。
ただ「好き」と言えない縛りが今度は物語全体の制約になってしまっているように思える。
主人公はヒロインの気持ちに途中からある程度は気付いているのだから早い段階で逆に「好き」と言えるはずである。
そうすればまた違った展開が待っていたはずとは筆者以外の観客も思うのではないか。
本作には手紙が登場するが、あまりにもこれを伏線として重視したために返って物語を不自然にしている。
プロの脚本家というのは話の展開を冷徹に算数のように捉えている。ここで伏線を張ってここで回収してというふうに。
あまり大きく伏線に固執すると登場人物たちの感情を犠牲にしてしまう。
そのため一見破綻がないような展開にはなるが何か納得できなくなる。
本作にもそういう傾向を感じた。
日本の映画はアニメも含めて脚本はしっかりと計算されて作られているが、計算されているがために意表をついた感動や驚きが出てきにくい。
計算の世界という点においては1作品につき脚本家を次々変えるハリウッドはその権化だが、ハリウッドはそれを演技力のある俳優を起用したりお金をかけることで補っている。
ハリウッドほど資金が潤沢ではなく演技のしっかりできる俳優も少ない日本ではどうしても見劣りしてしまう。
筆者は邦画がハリウッド映画より売れない理由は単にそのためだと思っている。
ただ世界を見渡せば脚本の一切ないテレンス・マリックや脚本的には破綻していても何か映画全体からパワーを感じるホドロフスキーなどの個性的な映画監督は腐るほどいる。
邦画でも物語の破綻を恐れず主人公たちのいきいきとした映画を観たい。
存在感や演技の巧みさという点においては村上が頭1つも2つも上であるが、他の俳優にも過剰な演技はなく普通の高校生に見えるのは最も好感の持てる点である。
ジャニーズやモデルあがりの女優たちが高校生を演じても高校生に見えないし、しかも演技もヘタクソなので、鑑賞は単なる拷問である。
ヒロインの吉田円佳は「たんこぶちん」というバンドのボーカル兼ギターらしいが、見た目が普通なところが一番良かったと言える。
BABYMETALを愛聴する筆者はボーカルのSU-METALと比べてしまうので吉田の歌がうまいとはお世辞にも思えなかったし、曲調も好きではない。
またドラマー役の金城茉奈もベース役の山田裕貴も相当練習したらしく、村上も以前からギターになじんでいるということだが、全員演奏させられている感がぬぐえない。
しかし上記の欠点を補っても余りある何か高校生らしさをこの配役に感じることはできた。近年の青春映画のひどい配役と比べるとこれだけでも成功に思えてしまう。
村上虹郎の父親の村上淳は二枚目の個性派俳優だ。虹郎も二枚目なところはいっしょだが、演技に関して父よりもうまくなる可能性を秘めているし独特の魅力を感じる。
次回出演作の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』も観に行こうと思う。
ただまた「時空を超える」要素があるのは気になるところではある…
青春映画の相乗効果
疾走感ある音楽に乗った予告編。乗せられてムビチケを買ってしまいました。
映画が始まってすぐ、主演の声が青春映画に合わないと感じてしまったのと、ヒロインが少し素人っぽいと思ってしまい失敗したかなと・・・。
映画は意外とあっさり二度目の夏が始まります。
練習やライブとバンドのシーンが多く、使用されていた たんこぶちん さんの音楽に乗せられてストーリーにのめり込んでしまいました。
そして、気づくと村上虹郎さんの声と落ち着いた演技、吉田円佳さんの無邪気な笑顔に魅せられていました。
好きな役者さんが増えて困ります。
ここから話逸れます。
映画を観て感じた事や思った事って、その時だけでなく他の映画を観た時に感動を強くする効果があると思いませんか?
青春映画では、それが一層強い気がします。
最近観た映画では、残された時間の過ごし方や価値を示した『君の膵臓をたべたい』や『君と100回目の恋』、言葉の大切さ難しさを訴えた『心が叫びたがってるんだ。』、音楽の力を魅せた『ハルチカ』、患者の命と希望の選択の難しさを突きつけた『仮面ライダーエグゼイド』、そして『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の「こんなに苦しくなったのも、乗り越えようって思えたのも、こんなにも好きだからなんだ」の台詞。
これらの映画を観たことで、この映画を自分の中で深めてくれた気がします。
話を戻します。
二度目の病室のシーン、一度目に後悔を残した言葉をしまい込みます。
無事に燐の最後の笑顔を観る事ができ、後の手紙でお互いの気持ちが通じていた事も分かり、この選択は正解なのだと思います。
でも、やはり言葉で伝えられなかった思いは残ってしまう気がします。
人生の選択って結局、何を選択しても後悔は残るのかもしれませんね。難しいです。
最後に、委員長役の加藤玲奈さんも魅力的でした。AKBさんのメンバーなんですね。テレビでAKBさんを見たら彼女を探してしまいそうです。
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