「息をもつかせぬその老人!」ドント・ブリーズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
息をもつかせぬその老人!
毎年量産される低予算ホラーだが、一本や二本、思わぬ傑作が生まれる事がある。
本作はその一つ。
正確に言うと、ホラーと言うよりスリラー。
しかし、この恐怖はホラー以上!
強盗で生計を立てている3人の若者。
次なるターゲットは、大金を持っているという初老の退役軍人。
独り暮らしで盲目。楽な仕事と思いきや、
その老人、視覚以外は超人的な感覚と身体スキルの持ち主で、3人は逆に追い詰められていく…!
話はこのワン・シチュエーション、ワン・アイデア、一本勝負!
序盤に3人の強盗手腕と各々の性格やドラマをコンパクトに見せ(主にヒロインの貧しい家庭環境と幼い妹思いの面)、テンポ早く“入ってはいけなかった”家の中へ。
地獄の一夜が始まる…。
怖い!強い!情け容赦ない!
この名も無き盲目老人に存在を知られたら、もう逃げられない!
家の中なのだから、老人にとっては自分のフィールド。若者3人は袋のネズミ。
また、この家がボロい普通の家の筈なのに、暗闇映像や凝ったカメラワーク、ドキリとするほどの音響で何かの迷宮かからくり屋敷のよう。何処に隠れ、何処から外へ逃げ出せばいいのか。
さらにも一つ障害が、老人の忠犬にして狂犬。このワンちゃんが“クジョー”並みに怖ぇぇぇッ…!((((;゜Д゜)))
まさにタイトル通り、“息もできない”極限状況下。
老人にしてみれば、かなりやり過ぎではあるが、正当防衛ではある。
盲目で独り身の老人が、金目当てで押し入った3人に立ち向かう。
しかも老人は、事故で娘を亡くしている。
ところがどっこい!
この老人の戦慄のキチ○イっぷりが明かされる。
その瞬間から、老人への同情心は恐怖心へと変わり、死に物狂いで逃げようとする若者たちの方へ感情移入。
大どんでん返しとか捻りある話とかではないが、展開に非常にメリハリある。
3人の強盗の紅一点、ジェーン・レヴィが拾い物の新星。
そして、凄まじいインパクトと存在感と恐ろしさを放つスティーヴン・ラング。
「アバター」での大佐が印象的だが、本作の強烈さは「セッション」のJ・K・シモンズにも匹敵!
監督はリメイク版「死霊のはらわた」のフェデ・アルバレス。
一時も安心出来ない次から次へと襲うスリルと緊迫感溢れる演出は、グロゴア描写よりずっと刺激的。
とてもハラハラドキドキ面白く見れた。
誰が善くて誰が悪いか明確にしてないのもいい。それぞれに、否もあり、守りたいものもあり。
続編が決まったらしいが…、
この話と設定だから良かったと思うが…(^^;
余談だが、
まだ日本公開は決まってない全米で絶賛された低予算ホラー「THE WITCH」や「GET OUT」も早く見てみたい!