「太陽が知っている」胸騒ぎのシチリア 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
太陽が知っている
アラン・ドロン主演『太陽が知っている』のリメイク。
ポール役:アラン・ドロン→マティアス・スーナールツ
マリアン役:ロミー・シュナイダー→ティルダ・スウィントン
ハリー役:モーリス・ロネ→レイフ・ファインズ
ペン役:ジェーン・バーキン→ダコタ・ジョンソン
というキャスティング。
古い作品とリメイク作を比べてアレコレ言うのは野暮だと分かっているけど、『太陽〜』めちゃくちゃ好きな映画なんで、どうしても比べてしまうなあ。(全く同じに作るのは意味ないわけで、色々変えてこそのリメイクだとは思うんですが…。)
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『太陽が知っている』、冷静に考えてみればすごくヘンな話で。
暗くて仕事もたいしてなくてアルコール依存で、しかも犯罪者で、若い女の子にフラフラしているような、冷静に考えたら絶対にダメな男ポールのことを、最終的に女は選ぶというあらすじ。そんなヘンな話だが、ポール役をアラン・ドロンが演じてるから許せるというか、マイナス点がすべてプラスになってしまうような魅力がある。
『太陽〜』はポール中心だが、『胸騒ぎのシチリア』はマリアン中心の映画になっており(『ミラノ、愛に生きる』の監督だから、そうだろうなあと観る前から予想はしてたけど)。マリアン役ティルダ・スウィントンも美しくて、こういう描き方も需要あるんだろうなあとは思うけれども。
個人的には、今回ポール役のマティアス・スーナールツを、もうちょっと際立たせた演出でも良かったんじゃないの?と思う(マティアスのファンなので、すみません)。
アラン・ドロンがプラスマイナスを引っくり返す魅力があったように、マティアス・スーナールツもそういう魅力あるのになあ、残念だなあと。
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リメイクするにあたって、ポールとハリーの水泳合戦とか、ペンの白いトップスから透ける乳首など、名場面はそのままだが、変わってる部分も。一番違うなあと思ったのは、『太陽〜』の方は、マリアンがほんとは誰が好きなのか?とか、ポールとペンが二人きりで何してたのか?とか、はっきりとは描かれてなくて謎めいている。ミステリアスだから面白いんだけど。『胸騒ぎのシチリア』の方は、明け透けで分かりやすい。
明け透けだなあ、ハリキリすぎだなあと思ったのは
まずペンの「全裸でカモン」。こんな分かりやすいエロ設定必要か?ダコタ・ジョンソンがどうしたって17歳には見えない。さすがメラニー・グリフィス&ドン・ジョンソンの血をひいてるだけのことはある堂々とした感じ。マミーポルノ『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の時は、なんだかウブなお嬢さんだとすら思ったのになあ。旧作ジェーン・バーキンの中性的な色気とは対極だなあと思った。
ハリー役も、あんなにはしゃぐ必要あったのか?旧作モーリス・ロネの、落ち着きとお茶目が同居した感じ、軽薄で酷薄で不遜な感じがすっごく良かったんだけども。今回のレイフ・ファインズも、めちゃくちゃ好きな俳優さんなんで期待してたんだけどなあ。何か方向が違ってたなあ。これは、あくまで個人的な好みの問題なんで、こういうレイフ・ファインズも魅力的と思われる方も、たくさんいらっしゃると思います。
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愚痴っぽい感想を長々書いてしまったけど、イタリアの風の吹かせ方とか、とってもカッコ良くて、楽しい映画でもあったなあと思う。